「婚約破棄だ！」と叫ぶ王子を無視して、ステーキを食べ続けたら隣国の皇帝に求婚されました

「婚約破棄だ！」
王太子が高らかに叫んだそのとき、
公爵令嬢である彼女は——皿の上のステーキを、ただ静かに切り分けていた。

嫉妬深い悪女、陰湿な嫌がらせ、身に覚えのない罪の数々。
華やかな舞踏会は、一転して公開断罪の場と化す。
しかし当の本人は、震えも泣きもしない。

「殿下。公の場での発言には責任が伴います。
　後ほど正式な文書にて申し開きをさせていただきますが――今は、食事中です」

その一言と、見事な食べっぷりを見逃さなかった男がいる。
隣国から来ていた若き皇帝だ。

「捨てられるには惜しい花だ。どうだ、私の手を取る気はないか？」

理不尽な断罪劇を、帳簿と証言で淡々とひっくり返す彼女の合理的な思考と胆力は、
やがて隣国の“食糧問題”と“貴族の利権”すら切り分けて…続きを読む