繭の眠りから醒めて
白菊
繭を出て、さがすひと
と申しますのも、私は
しかしこの繭には、致命的といってよい欠陥がございました。月光に反応し、ひとの目を惹いてやまぬ微妙な色を纏うのです。
とにかく、
私は繭が蕚を離れたときに事態に気がつきました。
その養分の供給が絶たれたわけですから、気がつかぬわけにもまいりませんでした。
やがて、なにかしれない馨りがしてきました。
「おや、色が
私の、はじめて聴いた
「ああ、美しい。彼の気に入るといいのだけれど、どうだろう
このときの
私は
私は
けれども私にも、
で、そのあとには決まっておおきな音が立ちました。ばりばりいうような、激しい音でございます。かたい
「ああ!──」
「この繭を破るとき、
あるとき、
「月明かりに反応する美しい繭でひとを
繭が主人の手に収められました。
「彼のことをしってくれるかい」
胸のあたりがぎゅうとなりました。
「
彼とは
學問を競い、おとなになると
「言葉にしてしまえばおもしろみのない関係だけれどもね、私は彼がいないと堪らないのだよ。彼は
「やあ、
私は
ああ、けれども繭は私を成長させました。そして「あなたはもうひとりでいられますね」とでも云うように、私にここが窮屈に思わして、なんとか外へ出そうとしました。
それで、私はもう、それに厭と云えないで、繭を破って、
「まるで人間のようだ。生まれてきたら涙を流すだなんて」
私は
ええ、そうです、やさしい聲の、私の
「私の願いを聞き入れてくれるかい」
私はさいごに
その世界は私のまるでしらぬもので、少しばかり不快なものでございました。
繭の眠りから醒めて 白菊 @white-chrysanthemum
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