遅れてごめん
すっげぇ昨日遅くまでやってた記憶が断片的にある。あいつの鉄仮面と夜の港湾で追走してた、それだけすっげぇ覚えてる。
――─「ピンポーン」
チャイムの音が聞こえる、時計を見ればもう遅刻ギリギリ。不幸中の幸いと言うべきか昨日は制服のまま走りに行ったからそのまんまで出れる。そのまま飛び起きバックを持って家を出る。
――─「仁くん!遅刻だよ!!何してるのよ!!」
あぁそうだった生徒会長と待ち合わせしてたのをすっかり忘れていた、もう来るまで行かないと確実に間に合わない。
――─「悪かったよ、今日は遅いから学校近くのガレージ借りてっから車で行くか。」
――─「本当は校則違反だけど、見逃してあげるよ。」
アパートの駐車場に停めてある、赤のスカイラインに2人は乗り込む。キーを捻り、セルが回り、エンジンがかかる。
――─「俺の運転荒いよ、あんまり乗り心地とかそういうの考えてないから。」
そう言いながら、ギアを荒く上げ、飛ばしまくる。でもそれでもこの時間を大切にしたい、すごく大切に。
――─「悪いな光一、お前の鉄仮面置いてるガレージにオレの32を置いてきた」
――─「そん代わり購買のパン奢れよアホの仁」
昼下がり、休み時間にこうして購買までの道、渡り廊下を歩きながらだべる。すっげぇ楽しい。だがその楽しい時間はすぐ終わる。
――─「仁先輩!」
高一の生徒会の後輩に呼ばれた、こういう時は大抵面倒なことだ。でもこの問題はどうしても看過できないものになってしまった。
――─「仁先輩!大宮会長が、不良グループに突っかかって連れていかれてしまいました!!」
――─「は?どこに連れてかれたんだよ、それとどういう類の不良だ?あいつ色んな不良グループに喧嘩売ってっからどこか分かんねぇよ。車関係ならある程度融通効くが、」
――─「その、車を弄ってる連中で校外に連れ出してるの見ちゃって、怖くて声を出せなくて」
こういう時は大体アホの石上に聞けば分かるが、この時間帯はある程度心当たりのある。港湾に向けて32を馬鹿みたいに飛ばす。向かうまでの時間はまるで、永遠に感じるほどに。
――─「そろそろだろ光一、クソ野郎のヤードは、、」
――─「あぁ、ここの公園を曲がったらすぐ整備工場がある、そこ裏の廃車置き場だ。」
おそらく連れ去ったのはグロリア乗りの頭の悪いヤンキー共だ。昨日学校で女の子に手を出そうとして、俺らに止められた腹いせだろう。
なりふり構わず32を廃車置き場に突っ込ませる。するとやはりと言ったところか、会長の服をカッターナイフで切ろうとしてるカスがそこにいた。
――─「てめぇ、オレに手を出せねぇからって俺の女に手を出しやがったな。」
――─「遅れてごめん会長」
俺は咄嗟にそう出ていた。
君と共にスカイライン 石鎚榛名三里の山 @fusoukokoku
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