その店では夜毎に塩が一袋買われ…。

田舎の国道沿いにある寂れたコンビニ
『マート・タナカ』そこは都会への夢破れ
故郷へと舞い戻って来た自分の唯一の
居場所だった。その、澱んで湿った夜に。
自分は居場所を求めていたのだ。

それへ夜勤の同じ時間に。

湿った泥の様な臭いと共に店を訪う女。
ぐっしょりと濡れたフードで顔はよく
見えないが、いつも決まって塩を一袋
買って行く。
 その対価は、いつの硬貨なのか
分からない古く汚れて錆びついた小銭。

森々とした筆致で語られる、その店の
曰くと、得体の知れない毎夜の訪いは、
 酷く忌まわしくも何故だか神々しさすら
感じさせる。
 そこは、嘗て沼だった。数多の怨嗟を
塩で精算してゆく、

 その、最後の ────。

  結局、その店で何が清算されたのか。

是非とも確かめて欲しい。