第7話 信長、選別の再臨
渋谷での銃撃事件が鎮圧された後も、街の混乱は収まらなかった。市民は、強盗団の逮捕よりも、水戸将軍の「子持ちカップル除外」という新たな選別ルールに怯えていた。
「子供がいれば助かる。いなければ…殺されても文句は言えないのか」
誰もがそう考えるようになり、街では偽装結婚や、子連れを装う人々の姿が急増した。
🐍 蛇の復活
その混乱の影で、瀕死の重傷を負っていたランキング二位(実質三位)の小田信長が、静かに傷を癒していた。彼は私設の隠れ家で、高度な医療設備と部下の献身的な看護によって、驚異的な回復力を見せていた。
「フフフ…水戸将軍め。馬鹿なことを始めたものだ」
信長は、将軍の「子持ちカップル除外」の声明を聞き、冷笑した。
「無差別な殺戮は、この『天下統一』のゲームを台無しにする。しかし、選別となれば話は別だ。これは**『質の高い狩り』**を要求する号令だ」
信長は、無謀な暴力で点数を稼いだ宗像や強盗団とは違う。彼は常に「効率」と「戦略」を重視する。
「武道家どもは馬鹿正直に武を振るう。老人は手榴弾などという野蛮な真似をする。だが、私は違う」
回復した信長は、すぐに部下を集めた。
「新しい任務だ。ターゲットを絞れ。『子を持たない』、あるいは『子を持つ気配のない』、若く、逃げ足の遅いカップルのリストを上げろ」
信長は、警察のデータベースやSNSの情報をハッキングさせ、標的を徹底的に絞り込み始めた。彼の「カップル狩り」は、テロリズムから**「組織的な選別殺人」**へと進化したのだ。
🥋 佐藤、新たな脅威を知る
渋谷での件の後、私は疲労困憊で道場に戻った。 将軍の命令が続く限り、私の戦いは終わらない。
「佐藤。渋谷での働きは見事だった。だが、お前一人の力では、この国全体を覆う狂気を止められん」 師範は静かに言った。
「わかっています。ですが、止めなければ…」
その時、テレビのニュースが、信長の復活を報じた。
『ランキング上位の小田信長が、再び活動を開始した模様です。その手口は以前にも増して巧妙化しており、ターゲットは非子持ちの若年層カップルに絞られています。』
そのニュースを見た私は、以前の宗像先輩や那須先輩とは、信長が全く違う種類の脅威であることを悟った。
宗像と那須は、**「個人の絶望や欲望」**に屈した武道家だった。彼らの軸は武道家の「心」にあり、それは「武道の心」で制止できた。
しかし、信長は違う。彼は**「狂った国策を最大効率で利用する」冷徹な戦略家だ。彼には「武道の心」などなく、あるのは「支配欲」と「計算」**だけだ。
「師範…信長は、もはや武道の技だけで止められる相手ではないかもしれません」
私は自分の腰に手を当てた。宗像の蹴りを受け止めて**「鉄芯」となったこの体幹も、信長の「計算された悪意」**の前では、ただの肉体かもしれない。
⚙️ 戦いの準備
私の決意は固まった。信長を倒すには、彼の**「軸」である「組織と情報網」**を断つ必要がある。
私は道場を出る際、棚の奥に仕舞われていた、古い**「ヌンチャク」**を手にした。素手の武道では、情報と武器で武装した組織には勝てない。
「師範、行ってきます。武道家として、そして一人の人間として、この狂った時代に終止符を打ちます」
「行け、佐藤。お前の腰の強さは、この国で唯一、**『義』**の軸を保っている証拠だ」
私は、ヌンチャクを腰に巻き付け、信長の潜伏場所へと向かう情報収集を開始した。その行く手には、計算し尽くされた殺意が待ち構えている。
小田信長の野望② 鷹山トシキ @1982
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