第2話 制作の時間


部屋は、静かだった。


朝の園庭とは、別の空気。


机が並び、

椅子が少しずれている。


あい先生は、

箱を抱えて入ってくる。


「制作、始めます」


「お願い」


箱の中には、

折り紙とクレヨンと、

よく分からないパーツ。


子どもたちは、

それぞれ席に着く。


完全には、揃っていない。


しょうた先生は、

何も言わない。


ただ、

椅子を一つ、引く。


それだけで、

列が少し整う。


あい先生は、

説明を始める。


「今日は、これを作ります」


紙を見せる。

少し大きめ。


「好きな色、選んでいいっす」


「赤!」


「青!」


「それ、二枚ある?」


「あるっす」


返事が早い。


子どもたちが、

一斉に動く。


紙が擦れる音。

クレヨンが転がる音。


一人だけ、

動かない子がいる。


机の上を、

じっと見ている。


あい先生が、

気づく。


「どうした?」


言いかけて、

止まる。


しょうた先生を見る。


しょうた先生は、

その子の机を見る。


クレヨンが、

一本だけ、転がっている。


他は、落ちている。


しょうた先生は、

拾う。


三本。

机の上に置く。


何も言わない。


子どもは、

一本取る。


描き始める。


あい先生が、

小さく息を吐く。


「……助かりました」


「うん」


しばらくして、

部屋が少し騒がしくなる。


椅子が動く。

紙が破れる。


「先生、できた!」


「見せて」


あい先生は、

順番に回る。


褒めすぎない。

でも、ちゃんと見る。


しょうた先生は、

机の間を歩く。


紙が、

机からはみ出ている。


少しだけ、戻す。


それだけ。


「先生」


あい先生が、

声を落とす。


「これ、失敗っすかね」


紙が、

ぐしゃっとなっている。


「失敗?」


「……ぐしゃって」


しょうた先生は、

少し見る。


「置いとこ」


「置いとくんですね」


「うん」


子どもは、

その紙を横に置く。


別の紙を出す。


何事もなかったみたいに。


制作の時間は、

いつの間にか終わる。


部屋は、

また静かになる。


「片付け、お願いします」


子どもたちが動く。


あい先生が、

箱を閉じる。


「……難しいっすね」


「うん」


「でも」


少し間があって。


「面白いっす」


しょうた先生は、

何も言わない。


椅子を一つ、戻す。


日中は、

だいたい、こんな感じだ。

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