ハードボイルド先生
キャンパス委員会
第1話 園庭は、朝から騒がしい
ブランコが鳴って、
すべり台の下で靴が一足転がっている。
砂場では、もう砂が散っていた。
しょうた先生は、
園庭の端に立っている。
全体が見える場所。
それだけで、十分だった。
あい先生は、
園庭を横切ってくる。
少し早足。
「しょうた先生」
「今、大丈夫っすか」
「大丈夫」
「砂場なんですけど」
あい先生は、
指はささずに、目だけ向ける。
砂場の端。
一人でしゃがんでいる子がいる。
黙って、
山を作っている。
「さっきから、あそこで」
「うん」
「泣いては、いないっす」
「見えてる」
あい先生は、
少しだけ表情を緩める。
「でも、一人で」
「一人だね」
「……声、かけたほうがいいっすか」
しょうた先生は、
砂場を見る。
山が崩れる。
手で、ならす。
また、積む。
「今は、いいかな」
「今は、ですか」
「うん。今は」
あい先生は、
一歩前に出る。
止まる。
「気になります」
「分かる」
「……でも、行かないんですね」
「行かない」
理由は、言わない。
そのとき、
別の子が砂場に入ってくる。
何も言わず、
隣に座る。
同じように、
山を作り始める。
二つ並ぶ。
高さは、揃っていない。
あい先生が、
小さく息を吐く。
「……あ」
「来たね」
「来ましたね」
少し間が空く。
「行かなくて、よかったっすね」
「結果的に」
「結果的に、ですね」
あい先生は、
軽く笑って、
周りを見回す。
次の声が聞こえる。
「呼ばれてるっす」
「行っておいで」
「はい」
あい先生は、
駆け足で離れる。
しょうた先生は、
立ち位置を少しだけ変える。
砂場が、
視界の中央に入る。
園庭は、
また騒がしくなる。
朝は、
だいたい、こんな感じだ。
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