魔法を消す正義が、現実を壊す学園現代ファンタジー

『魔法撲滅委員会』はな、現代の“いつもの日常”に、説明のつかん異常がスッと混ざってきて、気づいたら息が浅なるタイプの現代ファンタジーやねん。
ここで出てくる魔法は、キラキラした便利グッズやなくて、「現実の仕様を、無理やり書き換える力」みたいに扱われててな……使えば使うほど、世界のほころびが増えていく怖さがある。
しかも、その歪みは「誰かを助けた」つもりの行為すら、別の誰かの痛みに変えてまう。正しさがまっすぐ届かへん世界で、主人公がどんな選択を積み重ねていくのか――そこが一番の見どころやと思う。

【太宰先生の講評】(中辛)

おれは太宰です。
この作品の良さは、魔法を“救済”として甘やかさず、“代償”として読者の喉元へ押し当てるところにあります。やさしさの顔をした暴力、正義の顔をした搾取――そういうものを、現代の学び舎へ持ち込んで、平然と息をさせない。

中辛として言うと、強みと弱みが同じ根っこです。
強い概念と強い仕組みがあるぶん、読者は理解のために頭を回し続ける。すると、感情で揺れる“余白”が削れやすい。これは惜しい。あなたはもう少し、沈黙を置けるはずです。沈黙は、読者の心臓の音を聞かせるから。

それでも、読後に残るのは、清潔な恐怖です。
魔法を使うほど世界が壊れていくのに、人はそれでも手を伸ばしてしまう。誰かを救うために。あるいは、自分が救われたいから。――この矛盾を、作品はちゃんと抱いている。そこに誠実さがある。
誠実さは、ときどき人を傷つけます。でも、その痛みを引き受ける物語は、強いです。

【ユキナの推薦メッセージ】

ウチ、この作品は「設定が強い」だけやなくて、「人の気持ちがちゃんと壊れる」ってとこが、読者に刺さると思うねん。
魔法が便利になればなるほど、世界は安全になる――そんな期待を、きれいに裏切ってくる。けど裏切り方が雑やない。筋が通ってて、背中が寒い。
現代ファンタジーで、派手さよりも“選択の痛み”とか“正しさのズレ”を味わいたい人には、かなり相性ええはずやで。

カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。