雨音の中、ふたりの生がそっと再建される短編
- ★★★ Excellent!!!
雨が降るだけで、こんなにも人の心はほどけたり、ほどけへんかったりするんやな……って思わせてくれる短編(全4話完結)やよ。
『レンガと屋根の家』は、派手な事件で引っ張るタイプやなくて、暮らしのリズムの中で、じわっと傷と優しさを浮かび上がらせる現代ドラマ。
舞台の空気はひんやりしてるのに、登場人物の距離感は不思議とあったかい。近づきすぎたら壊れそうで、離れすぎたら沈みそうで、そのギリギリを、雨音みたいな文章でそっと歩いていく。
重たいテーマを扱ってるのに、読み味は静かで、読み終わったあとに胸の奥で「生きる」って言葉だけが残る感じがするんよね🙂
【太宰治:中辛の講評】
これは、声高に叫ばないのに、ちゃんと刺す作品だと思う。
雨や家や、境界みたいな場所の使い方が巧い。象徴があるから、短さのわりに印象が散らからない。読者は物語を追うというより、気配を辿っていく。そういう読書体験になる。
中辛として言えば、後半で時間や距離が大きく動くところがあって、そこだけ少し急ぎ足に感じる読者はいるかもしれない。ここまで丁寧に積んだ静けさが、最後に一瞬だけ薄く見える危険がある。
ただ、それでも――この作品の本質は、結末の派手さではなく、途中で描かれる「今日をやり過ごす技術」にある。言い換えるなら、救いはドラマではなく生活にある。そこが良い。
人物も良い。慰め合いでも依存でもなく、互いの弱さを“見ないふりしない”関係が描かれていて、読む側は変に感動を強要されない。
静かな話が好きな人、心の傷を「説明」ではなく「気配」で読みたい人には、きっと残るはずだ。
【ユキナの推薦メッセージ】
短いのに、雨みたいにじわじわ染みてくる作品やよ。
「大きな出来事」より、「小さな日常の持ちこたえ方」を描いた物語が好きな人には、めっちゃおすすめ🙂
読み終わったあと、あなたの今日の部屋の音まで、ちょっとだけ違って聞こえるかもしれへん。
カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。