これは、なかなか他では見ない雰囲気の掌編ですね。太鼓を叩きながら花を売るというのが、まず変わっていますが、合間合間に太鼓の擬音が入るのが、また変わっている。ですが、この太鼓の音が良いアクセントでした。これが「店主はリズミカルに太鼓を打ち鳴らし続ける」などの説明文だと、この読み心地は生まれなかったように思います。その太鼓の音の合間に語られるメッセージが、ほどよく心に沁みます。明確に起承転結がある物語ではないのですが、独特な語り口調と言い、不思議に心に残る物語です。
太鼓のリズムと威勢のいい語りがそのまま文章に流れ込んでくるような短編です。花屋という静かな存在を、あえて「五月蠅いオアシス」として描く発想が印象的で、読んでいるうちに街角の光景が自然と浮かんできます。花はすぐに散る命であり、その一瞬の輝きが人を照らすというメッセージは素朴ですが、まっすぐに伝わってきます。勢いのある言葉遊びとリズム感の中に、日常を少し前向きに見つめ直させる温度が込められた作品だと感じました。
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