オマケ ワンコイン

「うーん」


 昼休み。

 学食のメニュー一覧を見て、俺は悩んでいた。


「中条せんぱい、何にするかまだ悩んでいるんですか?」


 横からひょっこりと顔を覗かせたのは咲夜だ。その小さな手には、既にトレーが握られており、その上にはほかほかと湯気が立ち上るうどんが鎮座している。


 まずい。

 このままでは咲夜の麺がのびる。


「悪い。すぐに行くから先に食べててくれ」


「あはは。大丈夫ですよ、ゆっくり決めてくださいね」


 学食のメニュー沢山あるから悩んじゃいますよね、と。

 咲夜は、にこにこ笑顔で俺へのフォローを口にしてから席へと戻っていく。


 その先には、既に舞や可憐が自分の食事を受け取り席に着いていた。


 くそ。

 いつの間にそんな時間が経過していたんだ。


 俺は急いで自分の注文を食堂のおばちゃんに伝えた。







「遅かったわね」


「すまん!」


 舞たちの待つテーブルまで小走りで移動する。開口一番、舞の口から出たのは苦情である。本当に申し訳ない。


「だ、大丈夫ですよ。それほど私たちも待っていませんから」


 可憐、フォローしてくれるのは嬉しいけど、ちゃんと待たせたのは分かっているんだ……。


「それで、中条せんぱいは何にしたんですか?」


 咲夜が座りながらも、俺が手にしたトレーの上を覗こうと背筋を伸ばしている。勿体ぶる内容でも無いので、席に着きつつテーブルへとトレーを置いた。


「……素うどんですか」


「貴方、それで足りるの?」


 可憐は目を丸くし、舞は首を傾げている。


「中条せんぱい、もしかして具合悪いですか?」


「いや、そんなことないよ。大丈夫、ありがとう。さあ、食べよう!」


 咲夜の質問に笑って答えた俺は、手を合わせていただきますと言った。それに倣うようにして、一緒のテーブルに着いた三人も箸を手に取りいただきますと口にする。


 師匠。

 いくら学生向けの価格設定とはいえ、物価高の現状で一日500円はきついです。

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