最終の句
「記録とは 風に残る声 灯る影」
語られた記録は、やがて風となり、 誰かの耳に届き、心に触れ、 静かに灯をともす。
それは、声なき者の代わりに語る言葉。 それは、もう戻らない時間を、確かにここにあったと証す光。 それは、戦火の中で交わされた想いと、 生きようとした人々の、ささやかな祈り。
杉本は記録を終えた。 だが、物語は終わらない。 彼の言葉を受け取った誰かが、また語り始める。 リリナが、子どもたちが、そしていつか、 まだ見ぬ誰かが。
記録は、紙の上にとどまらない。 それは、人から人へと渡る灯火。 語られ、受け継がれ、やがて未来の誰かの手に届く。
だからこそ、杉本は最後にこう記した。
「記録は、生きている。 そして、記録者は、もうひとりではない」
風が吹くたびに、塔跡の草が揺れる。 その音は、まるで「ここにいた」と囁くようだった。
珊瑚の檣楼 ランカスター @Lancaster_md
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