語られる「物語」が刃に変わる、鮮やかな復讐劇

「物語の天使」と称される少女・イレーヌの正体、そして彼女が語り聞かせる寓話の真意が明かされた時、物語の風景は一変します。

金髪という「偽り」をまとい、好色な王へと近づく周到な策略。その根底にあるのは、かつて赤髪の母から受け継いだ「物語」という名の愛と、それを踏みにじった者への冷徹な殺意です。

特に秀逸なのは、冒頭の吟遊詩人の役割です。第1話で読者を惹きつける「装置」だった彼が、最後にどのような意味を持つのか。血よりも濃い赤髪に込められた執念と、最後に呟かれる「人は物語が大好き」という言葉の重みに、ゾクりとするようなカタルシスを味わいました。短編ながら、余韻が深く残る傑作ミステリーです。

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