証明の終焉（しょうめいのしゅうえん）

20XX年11月6日。世界中のデータベースと公的記録が、一瞬で消滅した。「エラーコード201」が繰り返されるディストピア。

銀行残高も戸籍も消え、真実の主張だけでは生存できない無法の街で、主人公・加賀美聡が頼るのは、父から受け継いだ土地の権利書と、20年分の古い運転免許証という、わずかな「紙の証拠」だった。

しかし、偽造の権利書、そして過去の裏切りを知る者による「嘘の証言」が、その紙切れの価値さえも無効化していく。

客観的な記録が崩壊したとき、人間を人間たらしめるのは何か？ 究極の混乱の果て、最後に残ったのは、法的な証明ではなく、隣人との間で静かに積み重ねてきた「信頼の記録」だった。

証明が終焉した世界で、あなたの存在を証明する、最も強固なシステムとは？

読み切り短編。硬質な世界観と社会派のテーマが好きな方へ。