最後の警告

 投稿者:無記名


 都市研究部 部長殿


 晴天とにわか雨繰り返す向暑の候、貴部におかれましては、ますますジメジメと石の下の虫のごとくご活躍のことと存ずる。


 さて、貴部において下記に挙げる卑劣な破廉恥行為が常習的に行われているのは当然ご承知の通り。


 これは度重なる警告に耳を貸そうとしなかった軽忽膚浅きょうこつふせんな貴部と貴殿に対する告発及び最後通牒である。


 聞き入れられぬ場合は実力を以って貴部の活動継続を阻止する準備があること留意せよ。


 今日こんにちに至るまで、貴殿はかみしもさまの御身柄を不当に独占し、この世で最も軽薄かつ不毛な私欲を満たすために利用するという畜生にも劣る愚行を続けている。


 裃さまによって齎される様々な恩恵をあたかも貴部の成果であるかの如く取り扱い、あまつさえそれを逆手に裃さまに同調と献身を強要している。


 そも昨年来の貴部は、裃さまの天真爛漫かつ奔放不羈ほんぽうふきかつ温厚篤実な御気性の一面を湾曲して解釈し、厚かましく保護者面をして手前勝手な価値基準をもとに自由意志を制限し、個人のプライバシーを著しく侵害してきた。


 御身の五体満足を維持するために適宜保護は必要なれど、そのために新参の貴殿が夜盗の如く強引に部に引き入れるという暴挙が、自他にどれほどの不利益を齎す短絡的な行動であったか貴殿はそのコガネムシにも劣る程度の脳で少しは思考すべきである。


 ただの数度、裃さまの御眼鏡に適う怪談を披露し賞賛を受けただけで御身の独占を全世界から許諾されたと認識しているのだとすれば、即座に終身収監されるべき偏執的かつ極めて危険な犯罪者的発想である。


 その人類史に残るであろう大罪を自覚すれば自らの不徳を悔やんで即座に舌を噛み切っていて然るべきであるにもかかわらず、今日にあっても貴殿が平穏無事な間抜け面を下げて登校を続けていることに関しては、呆れ果て切ってむしろ感心すら覚える。


 先月などは、催眠術実験と偽って裃さまの興味を引き、御身にきっしょい視線を長時間向けたばかりか、己が性欲の赴くまま偶然を装って身体への過剰な接触を幾度となく図り、裃さまを凡俗凡百の性産業従事者のように性的消費したという事実は、堪忍袋を爆発四散させるに十二分の衝撃と失望と憤怒を我々に与えた。


 貴殿は過去の度重なる過ちを猛省し、即刻部を解散し二度と裃さまに接近しない誓いを立て、成し得る限りにおいては腹を切って死ぬるべきである。


 さもなくば、校内に多数潜伏する同志の力を結集し、貴殿に然るべき報いを与える所存である。


 これは貴殿の行いが招いた当然至極の因果応報であり、この世で最も価値のない存在の一つであるところの貴殿の、今生におけるせめてもの功徳となるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る