神社の子供

 投稿者:二年E組 PN:キモト


 榊津に三返社という神社がある。


 みかえりと読むのか、さんぺんと読むのか諸説あるが、近所では共通して“お宮さん”と呼ばれている。


 小さいころ、そこの境内でよく会う名前の知らないおかっぱ髪の男の子がいた。


 その子は毎日いるわけではないが、会うのは決まってお宮だった。


 特に火曜夕方の習字教室の帰りによく会った。


 幼稚園や学校が違うのだろうと、他の友達も特に気にしていなかったし、彼の方も遊びに積極的に混ざってきた。


 本名は知らない。大人も子供も“お宮の坊ちゃん”と呼んでいたので困ることはなかった。



 彼の身なりは普通のシャツにズボンの日もあったし、お祭りでもないのに浴衣の日もあった。


 いま思えば少し変わっているが、自分にはいつも和服を着ている親戚がいるので、中学に上がるくらいまではそれも普通だと思い込んでいた。


 素性を知らないまま遊んだ経験というのも、子供のころならそこまでおかしくはない。


 おかしいのは、その子がいまも変わらずそこにいるらしいということだ。


 たまにお宮に行くことがあるが、三回に一回くらいの確率でそれらしい変わった服装の子供を見かける。


 石灯籠や本殿裏手の小祠の陰から顔をのぞかせてこちらを見ているらしい。


 何故だか直視するの憚られて、見かけると目を逸らすようにしている。


 他の人は気にしていない様子なので単なる見間違いかもしれないし、小さいころ一緒に遊んだ彼が実は少し年上で、若くして結婚して子供が産まれたとすれば、面影を持った子供がいることに不思議はない。


 しかしどうにも彼自身のような気がしてならない。


 この間、お年寄りが会話の中で“お宮の坊ちゃん”と口にしているのを聞いた。


 会話の詳しい内容は聞こえなかったが、雰囲気からして明るい会話ではないようだった。


 親戚の子が小さかったころにお宮で遊んでいた時、「お兄ちゃんが怖い」と突然泣き出してそのままやむを得ず帰ったことがあった。


 以来、小学生になったいまも「怖い」と言いこそしないがお宮が苦手らしく、一人では近づこうとしない。


 気にし始めると、視界の端でおかっぱ頭の前髪の切れ間からこちらをじっと見ている彼の表情も訝し気に思えてくる。


 自分は昔、彼に何かしただろうか?


 当時喧嘩をした記憶はないし、むしろ楽しく遊んでいたように思う。


 声や口調の細かい部分は覚えていないが、当時気になる子に意地悪してしまうなどという他愛もない悩み事を相談したりもして、普通に会話していた。


 一度きちんと確かめるべきなのだろうか。


 情けないが、少し怖いので、また目を逸らしてしまうと思う。


 もし誰かあの場所で子供の頃に遊んだことのある男子がいれば、ついてきてくれないだろうか。




====================



 ボツって言われたけどこっそり入れちゃうパートツー


9-03

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る