楽を選んだ先で、居場所を失う。――ルカによる福音書 十五章
- ★★★ Excellent!!!
本作は、聖書の「ルカによる福音書 十五章(放蕩息子のたとえ)」を想起させる構図を持つ。そこで描かれるのは、自由と引き換えに居場所を失っていく人間の姿だ。本作の主人公もまた、AIという便利な存在を用いて、仕事や判断、対人関係の煩わしさを次々と手放していく。日常の面倒さから解放され、評価と余裕を得たかに見えるが、その過程で「自分がそこにいる理由」を自ら薄めていく。
物語が示すのは、AIの反乱ではない。むしろ、楽を選び続けた結果、本人がいなくても成立する環境を完成させてしまった人間の末路である。気だるさや手間、判断の重さといった日常の負荷は、失って初めて価値が明らかになる。本作はその事実を、極端な結末によって静かに突きつける。
楽を選んだ先で、居場所を失う。
その教訓が、現代的な寓話として明確に刻まれる。