にんにく
私はにんにくが大好きだ。
大抵のものはニンニクを入れておけば美味しくなると信じている。
冬に差し掛かる寸前の11月中旬、今年こそにんにくを育てようと決意した私は、種球を購入しにホームセンターへ向かった。
にんにくは本来、暑さの落ち着く9月下旬から10月中旬にかけて植えるのが良いとされている。しかし時はすでに11月中旬。出遅れるにも程がある。通勤時の地下鉄もびっくりの飛び込み乗車である。
家庭菜園の知識が乏しい私は、にんにくの栽培方法をchat GPTに少し聞いただけで、あとのアドバイスは全て母に丸投げした。何を隠そう私の母はにんにく栽培歴0年である。素人もいいところだ。だがしかし自信だけは十分すぎるほどにあった。その自信に賭けたのである。
さあいよいよ、人任せの素人と自信満々の素人によるにんにくの植え付けが始まった。畝を作りマルチを敷き、株間15cm、深さ5〜7cm程度の間隔で種球を植えていくのだが、これがまたちまちまと面倒臭い。そもそも種球をバラす時点でもうかなり面倒臭かった。家庭菜園とはいえ、何かを育てるのは大変なんだなと、私はにんにくから人生の学びを得た。
「チッ」
私の向かいで作業をする母もちまちまとめんどくさいと感じているのであろう。ついに舌打ちを打つ。全く短気な母である。思いつきでにんにくを育てると騒ぎ、育てたこともないにんにくの種球をたんまりと買い、やり方がわからないにんにくの植え付けを50個以上せねばならない程度のことでイラついているのだ。当たり前である。十分すぎる理由であった。舌打ちで済んでいるだけ懐の広い母である。自分勝手にも程がある私のような人間よりもまだ、にんにくの方が可愛げがあるというものだ。
しかし、無事にんにくを収穫した暁には、食わせてやらんこともないなと思っているので今回はご勘弁願おう。むしろこれで一つも収穫できないとなれば私の身が危ない。ここまで手伝わせてしまった以上結果が出ないなんてことは許されない。
なんだかんだで無事ににんにくの植え付けは完了した。
果たしてにんにくは私を救うことができるのだろうか。
エッセイのようなもの 凡 @frt25
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