『死神』の伝説になぞらえた連続殺人。果たして、真相はどうなっているのか

 事件が発生していくテンポが速く、ぐいぐいと引っ張られました。

 本作では「冥恐の死神」と呼ばれる存在が伝説として語り継がれています。主人公である氷上憲治たちの通う織音学園には「死神を祀る石」が置かれていたものの、校長がそれを撤去することを決断。
 そうして作業をする途中、突如豪雨と雷に見舞われる事態が起こり……。

 氷上憲治、冬野愛音、寒川淳也、白雪帆乃、春雨冷花、霜原亜里沙の六人の新聞部員が、この学園で起こる不可解な事件に挑むことになります。
 死神を刺激したことで災厄が引き起こされるのではないか。そんな不安が出てきたところで、学園に通う聖澤絵里花が惨殺死体で発見される事態に。
 そして事件は更にエスカレートし、更なる犠牲者も出てくることに。

 何よりもミステリーとなっているのは、「死神」が「瞬間移動」を遂げたと思われていること。殺人を行った際にどう考えても校舎から校舎へと移っているように見えている。

 事件を掘り下げる中で謎めいた話も出てくるようになる。図書委員の四條孝弘と付き合っていた雪宮花帆がいじめによる自殺を遂げているらしいことなど。
 更に脇を固める人物として、一ノ瀬栄斗という男子生徒が出てくるのが印象的。やたらと露悪的な発言を繰り返し、あえてヘイトを集めそうな態度を取り続ける。彼も事件に何かの関わりがあるのか。

 そして(無関係かもしれないけど)白雪帆乃、雪宮花帆、帆足蓮華と、作中人物の名前に「帆」の字がつく人物が何人も出てくること。一ノ瀬栄斗、二ノ宮美南、三上清夏、四篠孝弘、用務員の五島信彦、刑事の六岡と漢数字も目立つ。そして新聞部員の六人は全員寒そうな名前。
 この辺りにも何かの仕掛けがあるような気がしないでもない……。

 犯人である「死神」の正体は一体。そして瞬間移動のトリックは? 他にも何かの仕掛けもあるかもと目の離せないミステリーです。

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