第11話



「誰が死んでいいと言った!」

 目の前のシュラーがいつも以上に息巻いている。

 さきほど突っ込んできて檻を吹き飛ばしたシャトルは、案の定、シュラーが操縦していた。ソーライの無茶を予測して様子を見にきたらしい。

 そうしたら、無茶をするどころか、死にかけていたわけだ。

「いや、だって、装置を発動させないとみんな助からないし」

「それは間に合う算段だったから問題ない!」

「ええー……」

「それよりも、なぜあの場で飛び降りたのか、それを聞いているんだ!」

「て、手が滑ったんだよ! でもほら、こうやって生きてるんだから問題ないじゃん! いやあ、俺って足が早かったんだなあー」

 あのときソーライは、咄嗟にばば様の元へ飛び降りた。

 それから、驚いて見上げてきている彼女を担いで、走れるだけ走ったのだ。

「……まあいい。それでこそソーライとも言えるからな」

 シュラーは諦めたようにため息をついた。

 その横で、ばば様が申し訳なさそうにシュラーとソーライの二人を見上げてくる。

「申し訳なかった。我があんな場所にいたせいで……」

「気にする必要はないよ、人生には刺激が必要だからな。てか、なんであんなところにいたんだよ?」

「あの檻を解除する方法を思い出したのでな」

「やっぱり! 俺を助けてくれようとしてたんだな」

「ただの気まぐれさ」

 ばば様はそう言うとそっぽを向く。ソーライは思わず「ああ……」と天を仰いだ。

「ああー。ばあさんがあと六十若かったら、俺、惚れてたかも」

「ふん。仮に六十若くても、六十五歳だ」

「なんて⁈」

 ソーライが驚いて目をむいているところへ、今度はナルハが近寄ってくる。

「ソーライ、すこしかがめ」

「うん?」

 ナルハに言われるままに背をかがめると、彼女は頬に何かを貼り付けてきた。

「この薬は火傷やけどに効く」

 さきほどの火の粉で傷を作っていたらしい。

「そうか、ありがとう」

「ソーライ。また来るといい」

「ああ。遊びに来るよ」

 そう返答したところへ、ナルハはニッと笑った。

「本当なら私もソーライについて行くつもりだったのだが」

「なんで⁈」

「ばば様に止められてしもうた」

「そ、そうか」

 ばば様ありがとう、とソーライは心の中で合掌する。

「でも私は諦めていない」

「あはは……」

「行くぞ。ソーライ」

 返答に困ったところでシュラーが上手く声をかけてくれる。

「じゃあ、またな!」

 ナルハたちに手を振ると、ソーライはシャトルに乗り込んだ。

「よし、シュラー。じゃあ帰るか、星間輸送管理局に」

「もう向かっている」

「帰ったらゆっくり眠れそうだな」

「何を言っている。次の仕事は溜まっているぞ。あそこに置いてきた、壊れたシャトルの回収もある」

「そっかー」

 ソーライは諦めたように苦笑いをこぼした。

 そこへシュラーが付け足す。

「母艦で待っているユーリヤも心配している」

「そっかー」

 帰る場所があるのはいい。

 とりあえず星も無事に救われたことだし、束の間の宇宙旅行でも楽しむことにしよう。

 ソーライは窓の外に広がる漆黒の宇宙に目をやって、それから静かに目を伏せたのだった。

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星間輸送管理局の業務日誌・2 四葉みつ @mitsu_32

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