第一話 Let You Down ~失楽園~
「かーさん、あのね、、、ヴィジョン・ログよりも、わが子の晴れ姿を見てほしいんだけど!」
少年は高層ビル群のうち、そこそこ背の高いビルの24階に住んでいた。綺麗な青空が見え、優しい緑と美しい絵画のような街並みを一望できる。その部屋の、ソファーの上で寝っ転がって頭になにか機械をつている母親からその機械を取り上げる。
「ぬわーーいいとこだったのに。」
母親は取り上げられた事に怒った表情を浮かべつつ、ソファーから足を降ろし立ち上がる。
「何見てたの?ナイチンゲール?ヘンゼルとグレーテル?」
「前者よ」
「飽きないね。コミックしか見ないからわかんないや」
「ナード」
「うっさいな。今日俺の入学式だよ?かーさん行こうよ」
少年はそう言い、玄関を指さす。
「まって、化粧してない」
「はーーーーかーさん、、、、ねぇ、、、」
少年はあきれて声が出ていなかった。
△▽
「えー本日から皆さんはこの、エデン第一スクールに通う立派な生徒です。その自覚をもち、、、、」
少年、ミハエルは集会場の前方でながい話をしている校長先生をボートみていると、母親からつつかれる。
「ねぇ、、あの先生眠たい声してるね」
「そう言うこと言うかな、、、、」
「いいじゃん」
「あんまり目立ちたく無いんだけど、、、親の七光りなんだし、、、」
「ごめんね、、確かにね」
少年ミハエルの父はエデン、いやこの世界に生を受けた人間な誰もが知っている大企業『神聖産業フライガング』の代表であるデルト・フライガングである。
神聖産業フライガングは神の癒し(俗にいう回復魔法)、の提供や上下水道、交通インフラ、そして神の試練なんて言われてる巨大生物魔獣に対抗する兵器、神像騎士の製造もおこなう企業だ。世界中すべての企業の裏にはフライガングが居るなんて言われてる。
「あんま、親父の恩恵は受けたくないんだけどな、、、」
「、、、ごめんねそんな体で生んでしまって、、、」
「かーさんは悪くないよ、、、なんにも」
ミハエルは魔法が使えない。人類には皆個人差はあれど必ず神と同調できる器官がある。がミハエルにはその器官の影一つないのだ。
かならず魔法が必要と言うわけでは無いが、神と同調できない人間は本来神に選ばれぬ悪魔として、魔女狩りの対象となる。生きたまま焼かれるか、良くて失楽園だ。
そんな人間を、神の恩恵をパッケージに詰め、今となっては形だけの教会をたぶらかし売っている人間が、愛せるわけなく、ミハエルを捨てようとしたところを母親がなんとか父を説得して他の人間と変わらぬ生活を送らせている状態なのだ。
『早く、独り立ちしたいな、、、、』
△▽
長かった校長先生の話を終え、スクールの外を歩くミハエルと母アルナ。
「今日はお父さんのところ行くから、先帰ってて?」
「わかったよ、気をつけてね」
ミハエルは母の背中に手を振り終え家に向け歩き始める。
プルルルル プルルルル
少し歩いていると、ポケットの中に突っ込んでいたメガネ型のデバイスが震え始める。ミハエルはそれに気づくとポケットからデバイスを取り出し身につけたのち振りを二時タップする。
ピロン
と言う音と共に、メガネ越しに表示されているのは電話の画面であった。
『よう、ミハエル』
少ししゃがれた年老いた声が聞こえてくる。
「どうした?リーク」
『いや、前送った裏モノバフ魔法捌けたか?ってな』
裏モノバフ魔法本来バフ魔法は専門の技師が規則に乗っ取って作るモノだ。しかし裏モノはアンダーログで主に製造流通している違法のバフ魔法だ。エデンでもジャンキー共に需要がある。
ミハエルは小遣い稼ぎにアンダーログのテックマエストロ、リークと手を組んで売り捌いていた。
「無問題、ジャンキー共に好評だったぞ?」
『そりゃそうだぜ!感覚を鋭敏にする俗に言う媚薬!あれやコレや、使い方なんて五万と思いつくぜ!』
「てっきり筋力増強だと思ってたが、そんなんだったのかよ、、、」
『お前も使ってみるか?注射器とアンプルは持ってんだろ?無料で良いぜ?』
笑い混じりにリークはそう言う。
「おいリーク、、、俺はまだ15だぜ?」
『使う相手くらい居んだろ?』
「居ねーよ、俺は童貞だ」
『まぁいい、新しい在庫の入荷、今行けるか?』
「いつものとこ?」
『あぁ』
メガネの縁をタップし、通話を終えたミハエルはメガネを付けたまま歩き始める。
このメガネは魔法では無くテックの産物である。曰くウェア、と言う名前らしい。慣れた手つきでそのウェアから伸びるケーブルの先に付いた電極を首筋に貼る。
「うし、、」
ミハエルは脳内で『マップ』と唱えるとメガネのスクリーンにここら一体の衛星写真と呼ばれる天から見下ろしたような物だ。
その調子でミハエルはウェアを操作し、目的地までのナビを表示する。ピンが刺されたそこは、町を囲うように存在している壁のその表面を刺していた。
この美しい街、エデンを囲う壁には、ゲシュタルトそう命名されている。一応、フライガングの管理してる物だ。空を雲を超えるほど大きな真っ白い壁。まるでドレスだ。
ミハエルはその壁を手でなぞりながら、一か所不自然に開いた穴を見つける。ビルとビルの大きな影に隠れたその穴をのぞき込むと、向こうから人が覗いている物の存在を発見する。
「リーク、よう来たぞ?」
「おう、遅いじゃねーか。まあ良い、これを」
壁を挟んだ向こう側に居たのはリークであった。リークはその穴から裏モノバフ魔法のアンプルや、注射器をしゅるりと穴からミハエルの居るあちら側へと受け渡す。
その瞬間だった。
「お前!そこで何をしている!」
その声に、ミハエルは振り返ると、そこには一人の人間が立っていた全身を白い衣で身を包み、腰に剣を携えたその男の胸には高級そうな金装飾のバッチがF.S.I.と書かれたバッチがあった。
「おい!ミハエル!まさか!」
リークの声にこたえるようにミハエルは言う。
「F.S.I.フライガング聖別捜査局だ、、、、」
フライガング聖別捜査局、いうなればエデンの町を守る騎士組織。フライガングの直属で、警察的な存在。
ミハエルの回答を聞いたリークは早口で、捲し立てるように
「逃げろ!ミハエル!あれを使え!」
とさけぶ。
しかし、ミハエルは体が硬直して動けないでいた。
今の状況は外の世界のテックマエストロ、エデン的に言えば黒魔術師、魔女からなにやら物をもらう不届き物。運良くて失楽園、それは運が良ければであって、通常は”死”だ。
「マジック!ウォーカーなんだろ!ミハエルお前は!」
その声にミハエルは目を大きく見開き、一気に思考が回転する。
「そうだな、、、、、、、スゥゥゥゥ」
ミハエルは大きく空気を吸い大声で叫ぶ。
「
その声に呼応するように、ウェアの画面に大量の数式や魔術式が表示される。濁流のように流れ、そして画面にこう表示される。
『詠唱バッファにガベージデータを注入... INJECTION COMPLETE. RESULT: 敵の攻撃待機時間を「12.5秒」延長。』
表示に合わせて、F.S.I.の騎士が剣を構え
「
と叫ぶ。その魔法は初球の攻撃魔法。名前のインパクトとは裏腹で、物としては大きな音と光が起きるだけだが、、、、、今回はそうではなかった。
ミハエルの使った
大きな光は一切起きず、F.S.I.は驚いた顔を見せる。
「リーク!ガン!銃!アラノ31!」
ミハエルがそう叫ぶと、
「あいよ!」
とリークは自身の持って居たバックから一丁の銃を取り出し、小さな穴から無理くりミハエルに銃を投げわたす。
銃それは魔力を使わない長距離武器。火薬と呼ばれる爆発性の物質の威力で鉛を飛ばす道具だ。魔法を重んじるエデンではあまり見ないだろう。だがアンダーログはそうではない。闇市場でメーカーと呼ばれる組織が作って売りさばいてる。
東洋の人間が作ったメーカーのアラノが作った物だ。
ミハエルはそれを受け取ると、グリップで混乱しているF.S.I.の頭を思いっきり殴り、気絶させる。
「すまん!リークコレ!使うぞ!」
リークに向けミハエルはそう叫ぶと、手に握ったバフ魔法のアンプルを割り、F.S.I.の周りに散らばす。
強い幻覚作用のある裏モノ、穴さえ塞げばここで起きた事をF.S.I.が話しても、ジャンキーの戯言と受け取られるはずだ・
「あーぁ、、、たけーんだぞ?それ」
「わるい!埋め合わせはする!」
「じゃ!今ど良い酒持ってこい!」
「わかった!後で連絡すっから!」
ミハエルはそう叫び、その場から走り去る。どんなに隠蔽しても、F.S.I.ここに立って居るのがバレればボディーチェックされるだろう。そうすれば、メガネのテックの事がバレる。それはまずいから逃げるのだ。
「はぁ、、、、やらかした!!!!!」
ミハエルはそう叫びつつ、逃げる。懐に銃、顔にウェアを付けた状況で、すこし考えればこれがまずい状況とわかるのに、ミハエルは焦っていてか、そのことに気づいていなかった。
その結果が、コレだ。
「とまれ!テックマエストロ!F.S.I.だ!」
ミハエルの周りを囲うのは武装したF.S.I.数十人。白色の球。ドローンと呼ばれる物だ。
ミハエルは捕まった。
△▽
「失望だ、ミハエル。いや元から失望していたが、このレベルだったとは。悪魔の子でなく、神に背を向けるテックマエストロになるとは。」
「ミハエル、、、なんで?なんで?テックマエストロと関係を持ったの?ねぇなんで?」
ここは、フライビル。フライガングの本店、そして、社長室、そして、父親の目の前だ。
「親父、おれはお前が嫌いだ。俺はお前の施しを受けるのもごめんだし、親父のひざ元のこの町エデンも嫌いだ。」
ミハエルはそう、声を荒げ父親に言い放つ。
「では良い、ミハエル。お前の願いをかなえよう。ミハエル。フライガングの名においてお前を失楽園とする。」
父親はそう、自身の子供に冷たくいった。要するに家から追い出すってこと。普通なら、泣いて懇願するだろう、嫌だって。でもミハエルは違った。喜んだのだ。
父親はそう言い、静かに部屋の階段を上る。部屋の外では足音、F.S.I.だろう。
その足音に怯えたのはミハエルではなく、母だった。
「まってよ!ミハエルを失楽園にするなんて!ダメだよ!」
そういい、母親はソファーから立ち上がると、階段を上っている父の腕をつかむ。
「ミハエルの考えもしっかり聞いてよ!約束したよね!離婚しないからミハエルの事を悪いようにしないでって!」
鬼気迫る表情って奴だった、その母親の表情は。
子を守りたいって顔だ、しかし、同じ子を持つはずの父は違う。彼は静かな表情のまま、
「アンダーログの人間はエデンに居てはならない」
と言った。簡単な話だ。犯罪を犯した人間には罰を、、、て事だ。母と離れるという点だけが心残りのミハエル。しかしそれを覗いても、この父がいる町から離れれると言う事はデカいのだ。何考えてるかわからない、父としての役目をほとんど果たさなかった人間。金の面だけだろう。
「でも!」
「もう話は終わりだ」
そういい、父は掴んでいた母の腕を大きく振り払う。その勢いは、なかなかでした。大きく後ろにのけぞる母親の背中をみるミハエルは、大きく目を見開いた。
別れとは、思っていた。しかし、その別れが内包している意味はそうじゃない。
とっさにミハエルは立ち上がり、階段から足が離れ宙を舞う母の元に走るが、遅かった。
多分頭蓋の割れる鈍い音が生々しく鼓膜をゆすり、赤い鮮血が白色の部屋に飛び散る。
「お前!ふざけんじゃね~よ!かーさん!かーさんを!!!お前なんか父親じゃねー!」
「そうか、、では尚更失楽園だ。そこの不格好なテックと共にさっさと出ていくんだ。」
そういって、階段を上り、姿をけす父と入れ替わるように、F.S.I.が入ってきて、ミハエルを捉える。
「クソ!覚えとけ!クソ野郎!かーさん!!!かーーさん!!!」
こうして、ミハエルは失楽園となった。
アマデウス ~僕には魔力が無いけれど、それでも神殺しをめざします~ 菓子月 李由香 @Yomumo
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