5.
――さすがだね! 篠原君!
――ああ、お前がいてくれてよかったよ!
周囲には僕を称賛する声がぐるぐるとまわっている気がした。ぼんやりと、反響するように。
まるで大空にあるブランコにゆらゆらと乗っているようだった。あるいはふわふわと、空中を漂っているような。
「――ああ、そこです。運転手さん」
僕を周回する声の中に潮見さんのものが混ざったかと思ったら、キッ、と音が鳴ってゆらゆらとふわふわが止まった。うーん、なんでだろ。よくわからない。
「はい。九八〇円ね。ってあれえ、どうしたの。もしかして彼氏君、酔っ払っちゃってる?」
「ふふ、そうなんです。お酒がダメなんですけど、間違ってアルコール入りのドレッシングを食べちゃって」
「あちゃー。そういうこともあるのかー。彼女さんも大変だねー」
「いえいえ、これくらいはぜんぜん。ふふふ」
潮見さんが誰かと会話している? 内容は……よくわからないや。なんだか普段の潮見さんの声よりもハキハキしているように思えるけど……たぶん気のせいかな、うん。
「さ、篠原くん。つきましたよ。こっちです」
「ん……? ああ……」
僕はふらふらと立ち上がって、歩く。どこへ? よくわからないけど、隣に潮見さんがいるから問題ないかな。あんまり見たことない景色が見えるような気がするけど、大丈夫だよね。
「ほら篠原くん。つかまって」
そんな声とともに、やわらかい何かに僕は身体を預ける。なんだか心地いいなあ。
いい気分だった。ああ、なんていい日なんだろう。合コンではうまくいったし。
うまくいった?
そういえば、あれから――サラダを取り分けてもらってから、どうなったんだっけ?
たしか、サラダを食べて、それから……ダメだ、よく思い出せない。
まあいいや。なんだかふわふわ気持ちがいいし。
考えるのも、めんどくさいし。
「おつかれさまでした。今日はゆーっくり休んでくださいね。
……わたしのおうちで。――わたしとずーっと一緒に」
そんな言葉を最後に、僕の意識は途切れたのだった。
合コンの参加者全員がサラダを取り分けようとする話 今福シノ @Shinoimafuku
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