概要
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- ★★★ Excellent!!!言えなかった言葉の行き先。
いつも軽やかで温度のある物語を紡がれる作者さまが、この作品では深い底の方から立ち上るような痛みを抱えて描かれているのを感じました。
その静かな悲しみの匂いに触れたとき、胸の奥に震えるものがありました。
この物語に描かれた「父」「骨の重さ」は、ただ肉体の質量ではなく、記憶やすれ違い、触れられずに残った沈黙ごと抱えあげたときの重みなのだと、深く沁みました。
きっと今も、見守られていると思います。
私自身も三十歳で父と別れ、しばらく涙が出なかった時期があります。
乾いた日々ののち、二年後に実家でうたた寝していた夢の中で、父に頭を撫でられたような気がして、その感覚で目が覚めたとき、ようやく涙がこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ぽかりと、穴が開いた。それでも世界は回っていく。
自分は祖父の葬儀の時、青臭くも終始涙を止めることができませんでした。
実質上の父親だったこともあって、思った以上に祖父の事を心の支えとしていたのかもしれません。
ただ、それで何かが変わったかというと、正直なにも大きく変わったことはなかったんですよね。
相変わらず私は実家から離れて暮らしていますし、給料は安いし、外食チェーンの飯は安定して美味いし、ニュースでは熊が暴れまわってるわけです。
私には大きな影響を与えたのに、祖父の死は世界に何も影響を与えてないんだな、と、当たり前のことを思うと、どうしようもない虚しさを感じてしまいます。
何か、あった方が良かったのでしょうか。
故人の生きた証となる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この感情に名前を与えるなら、なんとしよう?
親父が逝った。
祖父も祖母も看取り、妻を看取り、最後の最後に旅立った。
葬儀に訪れたのは、兄の一家、姉の一家、それから主人公の一家。
親が死ぬ。それこそ、生きている全人類がいずれ経験する、ありふれた行事だ。
不思議と、涙も出ない。
『父親』という距離感は、実に不思議である。
父親は、恩人であり、秩序や常識に関する教師、または反面教師であり、
人によっては恐怖やトラウマの対象だ。
一緒に暮らしている間は、こんなに父親に対して抱いている感情が多いのに、
家を出た途端に、その距離は微妙になる。
主人公も、きっとそうだったのではないかと思う。
毎日会っていたのが、月に一度に…続きを読む