設定はハードSFだが、文章表現からはツール選択の影響を感じる
- ★ Good!
本作は、設定に対して非常に真摯な姿勢が貫かれたハードSF作品です。
序盤の十一話時点では、異世界転生作品なのか、あるいはハードSFを志向した物語なのか、そのジャンルの帰趨を判断しづらい部分もあります。しかし、最新話まで読み進めると、その印象は作者の大きな構想力への驚きへと変わっていきます。
後半で展開される時間構造、宇宙物理、文明モデルを用いた世界全体の再定義は、明確にハードSFの思考体系に立脚したものだと感じました。
一方で、本作の文章表現からは、使用されているツールの選択が強く反映されている印象も受けます。
文体には独特の癖があり、日本語としての一般的なリズムや接続感とはやや異なるため、文脈を追う際に読解上の負荷を感じる場面がありました。
そのため、作品が内包している設定や思考の深度に対して、文章表現が十分に受け皿として機能しきれていない部分があるようにも思われます。
特に序盤において、「因果」や「代価」といったSF的中核となる視点が、もう一段明確に提示されていれば、読者はより早い段階で本作の志向性を掴めたのではないでしょうか。
設定そのものは非常に重厚で、世界全体を論理的に再構築しようとする意欲が随所に感じられます。
表現の壁を越えた先には、ハードSFとして確かな読み応えを備えた世界が広がっており、設定や構造を重視する読者にとっては、挑戦する価値のある一作だと思います。