第7話 更なる苦難 2
悪いことは重なるものでまだ色々と落ち着かないうちに、今度はマンションの建て替えで引っ越さなければならなくなった。提示された法外な立退料にも、全く関心のない馬さんは駄馬となっているし、子供達はみな忙しい毎日だったので、立ち退きの条件交渉などは、何の知識もない私の役目となった。
何しろ療養中の身のいるボンビーな我が家への、突然の立ち退き要請であるから、少しでも有利な条件でなくては困る。区の無料法律相談に出向いたり「法テラス」などに相談したり、更には不動産屋の担当者に我が家の窮状を訴えてみたりした。結果はボンビーな家族の納得のいくものとなり、何事も馬さんに頼りっぱなしだった自分にも、やれば出来るものだと嬉しかった。
転居先は都合よく目と鼻の先。義母は既に介護施設にいるので、今度は大人が五人の住まいとなる。大きくなった孫がひと部屋必要となったけれど、敢えて広さも一回り小さく家賃も二万円ほど安い所に決めた。いずれ馬さんも私もいなくなった時のボンビー家を考えての選択だった。間取りは3DKで前の住まいのようなゆとりあるLはなかったが、昔馬さんの住んでいた都営住宅の人口密度を思えば何てことはないさ、である。
大家族で住んだ都営住宅が、何と都合のいい物差しとなったものだと、しみじみ思う。母の「無ければ無いなりに暮らせばいい」の教えだってここに活きている、とも思う。無いなりの暮らしの工夫として私の技で、九畳あまりのDKを冷蔵庫やパーテーションで区切り、無理やり部屋とさせて「なんちゃって4K」の住まいに変えてみた。家賃も其々で割り勘にし、住めば都と洒落た「ボンビー達のシェアハウス」の完成である。
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