なぜか巨乳眼鏡のクラスメイトとお見合いすることになった僕

フィステリアタナカ

なぜか巨乳眼鏡のクラスメイトとお見合いすることになった僕

 何気ない日常はいつものように過ぎていく。僕の高校生活は可もなく不可もなく普通。周囲を見ると、あっちにもカップル、こっちにもカップルと楽しそうにリア充して――あー、羨ましいなぁ。僕に恋人なんかできるのだろうか? そんなことを思いながら休み時間階段を登っていた。


「あっ」


 階段から降りてくる女子生徒が足を踏み外して倒れそうになる瞬間、僕は彼女の前に身を置き、彼女を受け止める。僕もそのまま背中から床に倒れると、背中から何か抜けるような痛みが走り、その痛みで声が出なかった。


「大丈夫ですか!」


 僕が受け止めた人物はクラスメイトの槙野さんだった。彼女はおとなしい性格で授業中眼鏡をかけている。彼女は大きなおっ――うほん、男子生徒から人気があり、僕もその一人である。


「野比君ごめんなさい!」


(違うよ。僕は鈴木だよ。どうしてドラ〇もんになるのかな?)


「だ、大丈夫だよ。それよりも槙野さんは大丈夫?」

「あ、はい――ちょっと考え事してて、大丈夫じゃないかもです」


(槙野さん? 僕は怪我がないかどうか訊いているんだよ?)


「あっ、でもタマ君のおかげで怪我は無いです」


(いろいろ混ざっているな。僕は猫じゃないし、みかん割らないし、拓哉たくやだし)


 ちょっと不思議な槙野さんとまともに話すのは初めてだ。ん? まともな話か? まあ、いいか。


 ◆


「拓哉おかえり」

「父さん、仕事は?」

「今日の午後の仕事は無くなった」

「そうなんだ」

「明日から就職活動だ」


(おい、何をしてるんだ、あんた)


 家に帰ると職を失った父親が出迎えてくれた。そして父親は僕に言う。


「拓哉にお願いがあるんだ」


(ん?)


「取引先の娘さんとお見合いをすることになった」


(へぇー、そうなんだ。父さんお見合いか――って、もしかして僕?)


「えっ、僕がお見合いするの?」

「そうだ」

「いつ?」

「明日だ」


(お前、バカなんじゃねぇの? そんな大事なこと直前に頼むなよ)


「そうなの? でも何で急に僕がお見合いすることになったの?」

「取引先の人から十万円借りててな。キャバクラで調子に乗り過ぎた」


(ってことは、その十万円が原因で僕がお見合いすることになったのね。取引先の人と親睦を深めるのにキャバクラ使うなよ)


「はぁ。それで僕がお見合いする人はどんな人なの?」

「お前と同じでやぎ座の人だ。確か血液型はO型のはずだ」


(ダメだ、こりゃ)


 僕は親父の言っていることに呆れつつも、会社をクビになった理由を訊いた。


「ふぅ、わかったよ。それよりも父さんは何で仕事辞めたの?」

「キャバクラの女の子を落とすイメージを膨らますため、会社のパソコンでポルノ画像見ていたらバレた」


(地獄に落ちてから一回、生まれ変わったらいいと思うよ。父さん)


 そんなこんなで僕は明日、やぎ座の人とお見合いをすることになったのだ。


 ◆


「いやー、鈴木さんのご子息は拓哉っていうんですか」


 翌日。今、僕は父親とお見合いする場所に来ている。お見合い場所には父親とその取引先のご夫婦がいて、僕のお見合い相手は何ということかクラスメイトの槙野さんだった。


「ほら。拓哉君に挨拶をして」

「初めまして」


(槙野さん、初めましてじゃないよ? 何なら昨日階段で一緒に倒れたし)


「こんにちは、槙野さん」

「すみません。眼鏡かけてもいいですか? 周りがよくわからなくて」


(あー、眼鏡は外していた方がお見合いで見栄えがいいと思っていたのか)


 槙野さんは眼鏡をかける。そして彼女は僕を見ると彼女は固まった。


「……! 野比君なんでいるの?」


(だから鈴木だって――あっ、僕、みんなに野比ってあだ名つけられているのか、納得)


 僕はこの状況に何を喋ればいいのか、よくわからなかった。槙野さんの父親が僕の父親に向かって言う。


「鈴木さん、すみませんねぇ。急にお見合いしてと言って」

「いやいや、大丈夫ですよ、槙野さん」

「なにせ『今週、晴れの日が五日間続いたら、娘にお見合いさせた方がいいと神様が言っている』って、てるてる坊主が証言してましたから」


(僕の周りには普通の人はいないのかな? 普通な高校生活よりも刺激的でいいと思うことにしよう。でないと頭がおかしくなる)


「じゃあ、あとは若い二人に任せて」


 親達が部屋を出ていく。部屋に残された槙野さんは僕に言った。


「あのー。これから仲良くなりたいので、野比君じゃなく鈴木君って呼んでいいですか?」


(うん、そう呼んで)


「うん、鈴木でもいいし、なんなら拓哉でもいいよ」

「えーっと、拓哉君」

「うん」

「あたしと結婚してください」


(へぇー、そうなんだ)


「槙野さん、僕なんかでいいの?」

「はい、宗教団体のお偉いさんが決めたことなので絶対です」


(槙野さんのお父さんって宗教団体で偉い立場なのね)


「それに拓哉君とはやぎ座同士で相性いいですから」


 僕は諦め、運命だと思って全てを受け入れた。


 それから僕らは高校卒業後結婚して、とても幸せな人生を送ることになったのは、また別のお話。めでたしめでたし。

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