悪魔のジャンケン(完結)

床の間ん

悪魔のジャンケン



 ある日、旅を続ける勇者の前に、恐ろしい悪魔が現れる。


 悪魔、それはとても恐ろしく、いかに勇者と言えども なんとかできる 相手ではない。しかし理由はわからぬが、その どうにもならない 悪魔であっても、なぜか好き放題暴れたり人を殺めて回ったりはできないらしい。



 故に悪魔はいつだって、言葉を用いて取引をもちかける。そんな存在なのだ。



 そして、往々にして悪魔は、目的の如何に関わらす、多くを求める者の元に現れる。



 聖者然り、勇者然り、


 

 悪魔は勇者に、威厳有る声色で語りかける。


 が、その態度はどこか、めんどくさそうだ。







 悪魔「んー、その力、貴様が勇者か。貴様は、 悪魔からの勝負 を受けるに値する。そうなれば、勝負を持ちかける他あるまいて。


じゃが、お互いヒマでは無いだろう?ここはどうだ、すぐ終わる勝負にしよう。んーーー」






 勇者「…」(こいつは悪魔、こいつは始めから 自分の思い通りに行かない なんて微塵も思っていないな。)





悪魔「フアアアアア」(大あくび








 勇者(ギリッ



 抜くか?勇者は迷う。勇者の剣ならば、悪魔にも届くやもしれぬ。しかし、目の前の悪魔のわざとらしい顔には、


 いいぜ、こっちが話してるうちに斬り掛かってこいよ。


 と書いてあるような気がしてならない。それはおそらく、奴の思う壺なのだろう。

 




 悪魔(ジッ







 悪魔は続ける




「そうだなー、  勇者よ、我とジャンケンをするのだ。貴様は我とジャンケンをし、我にジャンケンで勝てば巨万の富を約束しよう。ただし、 我が、勝負に勝てば、魂をもらう。


手っ取り早いだろう。」


 

 



 悪魔が軽い感じで持ちかける勝負を、降りることはできない。





悪魔は続ける。「普通のジャンケンじゃあつまらんなー。そうじゃ、  我はグーを出さない。  悪魔は約束だけは必ず守る。そして、あいこ二回でもお前の勝ちってことで良いぞ。」




悪魔「良いな。じゃあはじめるぞ。」






勇者は良いなんて一言も言ってないのに勝負は勝手に始まる。相手は悪魔なのだから。






 一発勝負、運命の 


  必ず勝てる


 ジャンケンが始まる。




悪魔・勇者「「じゃーんけーーんーーー!」」





悪魔・勇者「「ポン!」」 


悪魔はパー!

勇者はグー!



悪魔はグーを出さない約束を守った!


グーを出した勇者はジャンケンに負けた。





悪魔(ギリギリギリ


さっきまで投げやりでどこか退屈そうな顔をしていた悪魔の顔が、悪魔のような顔に変わる。





だが、








しかし、悪魔は勇者の魂を奪うことができない。


悪魔は消え去った。








なぜか?







(解釈)





グーを出せない、しかも、あいこ二回でも負ける激弱すぎる相手とのジャンケンを、そこそこ最低限フェアな勝負にしてやるなら、




自分がグーを出せばいい。




そして、フェアな勝負は対等の相手としかできない。転じて、フェアな勝負に持ち込むことで、勇者より上位の存在である恐るべき悪魔を、対等な立場へと引きずりおろすこととなる。結果、悪魔は勇者の魂を奪う力を失う。




もし、悪魔の言葉にまどわされ、巨万の富欲しさに目がくらみ、 しめしめ とばかりに チョキを出してジャンケンに勝てば、たちどころに悪魔に魂を奪われるだろう。




悪魔の言葉で、


悪魔のルールに乗り、


自身の意志を手放し、


手のひらの上で踊った時点で、





既に魂は、悪魔の手の中にあるのだから。






最初から悪魔は、 「我が、勝負に勝てば、魂をもらう。」 というように、ジャンケンでなんか勝負していないのだから。






 おしまい













 おまけ




悪魔「我はグー「ジャンケンポン!はいお前今パー出してた!俺はチョキ!お前の負け!!!」」


勇者「富!富!早くくれ!!」


悪魔「」(小学生かよ)



 

 ほんとにおわり






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悪魔のジャンケン(完結) 床の間ん @tokonoman

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