種札の渇き

脱水で命を落とした主人公が目を開けたのは、水鏡と畦が呼吸する冥府の隣町。祖たちの手ほどきで、露を移し、根の歌を聴き、雲絹を張り、畑の拍を整える術を覚えていく。輪の縁では香と天秤が夜ごと鳴り、賭卓の誘いが耳を刺すが、彼が賭けるのは自分ではなく畦の明朝。乾きの獣が合図を鳴らし、伏流の門が口を開くとき、家印の「裂け」をあえて塞がずに通す選択が、世界の流れを救う唯一の橋になる。計量塔の審で認められ、雨帳の誓紙へ文を写し、名のない潮へ「綴」という座を用意するまでの静かな戦いと、薮端で肩を並べる弟子との小さな日々。魔法と博奕が混ざる土地で、喉の痛みを歌に変え、耕すことで呼吸を取り戻していく。