大空のスクリーン
亜香里
大空のスクリーン
空は大きなスクリーンだ。
朝――
幾筋もの白い龍が悠々と舞い上がり、澄んだ青の舞台を自由に飛び交う。
昇る太陽はその姿を黄金色に染め、新しい物語の幕を開ける。
胸の奥には自然と小さな高鳴りが生まれ、今日という一日が始まっていく。
やがて――
龍たちは灰色の群れとなり、空はしっとりと雲に覆われる。
そして指揮者のタクトのように最初の一滴が落ちると、
雨粒の合唱が世界をやさしい旋律で満たしていく。
歩みを緩めるようにと語りかけながら。
やがて雨はやみ、空に光が戻る。
透きとおる光の中で七色の虹がかかり、
まるで「雨のあとには新しい希望が待っているよ」とそっと語りかけるように世界を包み込む。
その橋を見上げながら、心は未来へと伸びていく。
そして――夕暮れ。
空は燃えるような赤と紫に染まり、まるで壮大な絵巻物を広げたかのよう。
沈む太陽は、今日一日の出来事をやさしく抱きしめ、
「また明日」と告げながら地平線の向こうへと隠れていく。
夜になると、漆黒のスクリーンに月がゆっくりと姿を現す。
その静かな光が夜の舞台を優しく照らし、
ひとつひとつの星々が空に散りばめられる。
流れ星は、ほんの一瞬だけ映し出される予告編のように空を横切る。
――こうして空は、一日ごとに違う映画を上映する。
観客である私たちは、ただ顔を上げるだけで、
その壮大で移ろう物語に立ち会うことができるのだ。
大空のスクリーン 亜香里 @akari310
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