第54話 作戦準備

 レイはセレジアから王妃を恨む者について話を聞く。


 王都アテネでは、後継ぎを決めることで問題が起きている。


 一国民であるレイに詳しく話せないが、未来を見据えた動きをする王妃に対し恨みを持つ者が現れたと、内部から情報を手にしていたセレジア。


 事前に調査をしたかったセレジアだったが、準備をしている最中に今回の事件に巻き込まれ怪我をしてしまった。


「後継ぎ問題か、俺にはよく分からないけど恨みを買うほどの何かがあった。そこにセレジアも巻き込まれてるんだよな?」

「そうね、私を産んでくれた母を死なせたくない、だからやれることをするわ。話した通り、これは王族の話し、余計なことにあなたは関わらない方がいいわ。」

「それ、本気で言ってるのか?」

「え?」


 レイは焼き魚を食べ終え、セレジアを見つめる。


「当たり前でしょ、あなたはこの国の1人でしかない、王族の問題にあなたが介入するのはおかしいでしょ。」

「ふーん、そうか。……そういや、セレジアを襲った奴らは黒ずくめだったか?」

「え?しっかりとは見えなかったけど、黒い物体ではあったわ。人の形かまでは見えなかった。」

「なら、俺はその問題にもう巻き込まれてる。それに、俺はどこにいてもそいつらに襲われるらしいからな、仲間に迷惑をかける前に対処したい。」

「だからって、こっち側に来てしまっては余計に人生を棒に振るわ─。」


 レイの視線を受けたセレジアは、話すのを途中でやめてしまう。

 彼の意思は、気持ちは、揺るがないということを嫌でも感じた。



 以前レイに同じ忠告をしたことを思い出すセレジア。


 その時のレイも、すぐに覚悟を示してくれた。



 正面から、受け入れると。


「……確かに、私があなたに話してしまった時点で本能的に巻き込むつもり、だったのかもしれないわね。ごめんなさ……お願い、レイ、最後までとは言わないけど、あなたが許してくれるところまで、その時まで力を貸して欲しい。」

「当たり前だ、セレジアほどじゃないけど戦う力は持ってると思う、背中は守らせてもらうよ。」

「頼もしいわね、相変わらず。じゃあ、いきましょうか。」


 起きて動き出すセレジアに対し、慌ててレイは手を上げ止まらせる。


「おい、正気かセレジア!まだ毒が残ってるって言っただろ!それに、熱だって引いてない─。」

「もう平気よ、あなたの処置のおかげで私の体は回復したわ。」


 セレジアは拳を強く握り、大丈夫なことを示す。



 しかし、


「魚はまだ4匹ある、これを無駄にするか?」

「え?……仕方ないわ、早く行かないといつ襲われるか─。」

「そうか、なら俺が全部食べちまうな。命を無駄にしたくないから、人も、俺の命の源になってくれるものも。」

「……じゃあ、私は先に、っ。」


 ふらついたセレジアは、壁の岩に手をつき体を支える。


「それが現実だ、その症状は3日は残ると予想してる、無茶して先に進んでもセレジアの命が危険に晒されるだけだ。命をかけてあんたを助けてくれた騎士の仲間に、それで顔向けできるのか?」

「……。」

「命を助けられた者は、助けてくれた者に顔向けできる生き方をしないといけない、俺はそう教わった、らしい。」


 レイはこれまでの感情が思い出されると同時に、少しずつ記憶の欠片も戻ってきていた。




 レイの言葉を聞き、何も言い返せないセレジア。

 普段の彼女であれば、レイの言葉に対し容易く反論するだろう。

 レイがセレジアに舌戦をした場合、セレジアの全勝で終わるだろう。



 しかし、熱もあるせいか頭の回転がいつもより悪く何も言えなかったセレジア。


 そして捻り出した言葉は、


「……お魚食べたら、ついてきてくれるのかしら?」

「美味しく食べて、セレジアがある程度回復したら俺はどこでもついていくよ。無茶するあんたの姿は、容易に想像できるからな。だからこそ、無茶をさせたくない、利用し利用される関係として。」


 レイは魚を焼きながら、立ち上がったセレジアを見つめる。

 4匹の魚が食べ頃に焼き上がっていた。


「分かったわ、少しでも早く回復させて怪しい場所をしらみつぶしに行くわ。あなたの治療をあてにさせてもらう、期待してるわ、レイ。」

「任せろ、ほらよ。」


 レイから焼き魚を瞬時に3つ受け取り、距離をとって食べ始める。敢えて、隣同士で食べることはしなかった。

 魚をもらうスピードは、先ほどの倍以上。


 レイも、2つ渡したつもりだったが3つ無くなってることに気がつくのに数秒要した。


「あれ、いつの間に俺の分まで!」

「あら、怪我人が回復するのを優先していいんでしょ、たくさん食べて寝るのが大切だって私は学んだからありがたく頂くわ、大切な命を。美味しく作ってくれてありがとう、レイ。」

「こいつっ、熱があっても頭が無駄に良すぎて嫌になるな。これが、壮麗の権化の正体か。」

「あら、嬉しい褒め言葉をありがとう。因みに、前にも話したけど私のことで余計なことをもらしたら凍り付けにするから、よろしくね。」


 2人は、利用し利用される立場。



 だが、2人の関係値は今回レイが助けたことで更に強固になっており、次開始される作戦はかなりの連携を発揮できることが予想できる。


 セレジアの予想する王妃を狙う正体を、追い詰めることはできるのか。

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