第53話 襲撃者

「……んっ、ん?」


 目に映るのは、暗い空間に静かな風が吹き、辺りは岩だらけで殺風景。

 さらに、足元では焚き火のような音が頭の中に直接響き、辺りを照らしてくれていた。


「……ここ、は。」

「おっ、起きたか。目覚めてくれて良かったよ。」

「あなたは、レイ?」


 目を開いたのはセレジアであり、ふわふわ落ち葉の上に布を敷いて横たわっていた。

 体を起こし、セレジアはレイを見つめる。


「そうだよ、何だ、俺の顔忘れたか?何回も会ってるのに。」

「冗談でしょ、いろんな意味で嫌いなあなたの顔は忘れたくても忘れられないわ。」

「本当、可愛げがないな、セレジアは。」

「あっ??」


 セレジアは鋭い眼光でレイを睨み、レイは避けるように焚き火に木を追加していく。


「それより、なんであなたがここに……っ。」

「動いちゃダメだ、可能性もある。」

「毒?」


 立ちあがろうとしてふらついたセレジアは、左腕が布で巻かれていることに気がつく。


「私は、毒を撃たれたの?」

「多分そうだ、その傷は矢でつけられたものだと思う、そのヤジリに毒が塗られてたんじゃないか?」

「……確かに、狙撃をされた記憶はあるわ。」

「熱も少しあるはずだ、まだ安静にしてろ。なあ、何でここにセレジアは1人でいたんだ?鮮血の銀髪の防具も壊れて散らばってた、ただ事じゃないよな。」

「……そうね、予想外なことが起きたわ。」





 遡ること数十分前、セレジアは騎士団のメンバー10人でアテネ近くを巡回していた。


 騎士団の評価が下がってしまっているため、少しでも回復させるためにクエストをいくつもクリアしていた。


 そこで、最後のクエストを終え帰還する際に、

 1人の兵士が何者かに撃たれその場に倒れた。


 セレジア達は狙撃されたことを認識し、警戒態勢に入るも敵は外侮だけではなかった。


 連れていた騎士の中に1人偽物が紛れ込んでおり、鋭い剣で3人が切り捨てられた。


 動揺を隠せない残り5人の騎士は、退却するべく盾を構えながらアテネに向かった。



 しかし、狙撃された矢がセレジアを掠め、近くにあった崖から転げ落ちセレジアは気を失った。


 それから、騎士の行方は知らない。



「そうだったのか、あの崖から落ちて生きてることが奇跡なレベルなんだ、もっと安静にしててくれ。」

「ええ、私はどれくらい眠っていたの?」

「俺がここに運んでから、3時間は眠ってたと思う。ほらっ、お腹も減ってるだろ?」


 レイは枝を口から尾に通して、しっかりと焼かれた魚を渡す。


「あ、ありがとう。……待って、あなたどうやって私をここに?」

「そんなの、こうやって運んできたんだよ。」


 レイはお姫様抱っこをする動作をとる。


「そんなことしたら、あなただって無傷じゃ─。」

「大丈夫だ、セレジアほどじゃない。」


 レイは両手が凍傷になっていた。


 その傷を見て、セレジアは心を痛めた。


「ごめんなさい、私のせいで。」

「だから、謝るなって!」


 レイはセレジアの顔に急接近。


「え?」

「俺は俺がやりたいと思うことをやるだけだ、セレジアを救いたいと思うこの気持ちに嘘偽りはない。くれるなら謝罪じゃなくて。」

「謝罪じゃなくて?」


 レイは優しく微笑み、


「感謝の言葉が欲しいな。」

「感謝の言葉、ね。……あ、ありがとう。私を助けてくれて。」


 セレジアは目を逸らしながら感謝を述べる。

 少し頬を赤く染めて。


 その姿を見たレイは、


「ふっ、初めて可愛げがある姿を見た気がするな!」

「あ?凍り付けにするわよ?」

「前言撤回、やっぱりセレジアは可愛げないわ。」


 それから、2人は焼き魚を食べすすめながら、毒について話す。


「あなた、どうやって毒を出したの?残ってるってことは、出来るだけ外に出してくれたのよね?」

「簡単だ、吸い出したんだよ。毒ってのは、体に入って血管から入り込んでいくのに時間はかからない、だけどセレジアの魔術のおかげか負傷してた部分が凍ってたから何とか処置ができた。」


 レイはセレジアを抱き上げ、手から腕が凍りながらも自分は熱を集中させることで氷を溶かしつつ近くに見つけた洞窟に進み、横たわらせる。


 腕に傷があり、毒の匂いを感じ取ったレイは腕の上部を布で縛り上げ、傷口から血を吸い出し外に吐き出す。


 何度か繰り返し、傷口に水をかけさらに毒を抜く。


 水は近くになかったが、セレジアの魔術で凍らされた手を熱で溶かすことで、代用していた。


「あなた、口が赤いのって私の、……魔術で凍傷に……。」

「少しな、飯が食えるし話せるから問題はない。俺のことより、セレジアは誰に襲われたのか知ってるのか?」

「……少しだけ、心当たりがあるわ。」

「そうなのか!教えてくれ、俺も今朝黒服の集団に襲われたんだ、そのせいで1人怪我して。」

「そうなの?まだ私の憶測でしかないけど、がいるらしいわ。それを調べたかったんだけど、クエスト中に襲われてこのザマよ。」

「王妃に恨みか、厄介そうなことになってきてるな。」


 セレジアは襲われた人達に心当たりがあり、今はレイが近くにいる。


 彼女はレイに何を話すか?

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