第47話 譲れない者

 オウロとアンリの戦闘は激化の道を辿っていく。


 ダガーと拳が1秒に2度は打ち合い、金属音が常に響き渡る。

 アンリの動きに瞬時に反応するオウロ、オウロの攻撃をこれまでの経験と知識をフル活用して捌くアンリ。


 両者一進一退であった。


初式ショシキ雷光ライコウ!」

「二段、縦時雨タテシグレ。」


 オウロの腰を落とした正拳突きと、アンリの縦回転しながら放つ攻撃が正面からぶつかり合い、お互い5m程後ずさる。


 オウロは右頬と、左脇腹から軽度の出血。

 アンリは右腕と左肩から出血が見られた。


 戦い始めて2分も経過していないが、2人の呼吸は上がり、

 特にアンリの表情には余裕がなかった。


(はぁ、はぁ、ゴリラ型、そして兄さんとの戦闘で疲労が溜まっていたとはいえ、このオウロさんって人は相当強い。うちの攻撃が両手起因だと分かっているから、狙いも腕に絞られている。……どう対処する─。)

「考えすぎですよ、謎多き戦士さん!追式ツイシキ七光ナナヒカリ!」


 オウロはトップスピードに瞬間的に上げ、鋭い拳の7連撃がアンリを襲う。

 ダガーでギリギリ捌くも、パワーの差を受け止めきれず最後の一撃で木にぶつかる。


 衝撃で枝が折れ、地面に落ちる。


「うはっ、はぁ、はぁ、あなたのような人が兄さんの近くにいれば、うちはお役御免なのかもしれませんね。」

「そんなわけないだろ、兄妹が殺し合う必要なんてない、やっと会えたならつまらないしがらみなんて壊して共に生きればいいだろ!」

「……うちらの流派は、そんな簡単に割り切ってはいけないんです。本当は、うちだって。」

「だったら、あなた自身とレイを信じて行動に移せばいい。君の知るレイは……兄はそれだけ強い人だろ?」

「それでも!うちらは掟を守らなくちゃいけないんです─。」


 アンリが声を荒げ、ダガーを構える。


 目の前には、オウロが構えを解き優しく微笑む姿が。


「っ!?」


 予想外の行動に、アンリも行動に移せない。


 目の前にオウロという敵がいる。

 しかし、兄を助け共に生きてくれているという事実が、アンリの行動を阻害していた。


「な、何しているんですか、構えてください、でないと殺しますよ!」

「君にはできない、僕が強いからでも、君が強いからでもない。レイの妹という存在が、君という優しさがそんなことを許さないから。」

「分かったようなことを!」

「君は相手の心を読むことが出来るみたいだね。だったら、自分の心だってよく理解しているはずだ、君は初めからレイを殺すことだけを考えていたわけじゃない。」

「え……。」


 オウロの言葉に、アンリは動揺を隠せない。


「君は、。」

「っ!?そうなのか、アンリ。」

「……何をもってそう感じたのか分かりませんが、うちはやるべきことをするだけです。この身は、もう捧げたのですから!」

「自分を偽って大切なものを殺し、その償いとして自分を殺すことが、君の望むものなのかい?」

「……くっ。」


 オウロの言葉に言い返さず、

 アンリはダガーを腰にしまい、レイを見つめる。


「……アンリ。」

「……ごめんなさい、兄さん。今日はここで退きます、ですが、次会う時にはその命を奪うことになると思います。ですから、兄さんもうちと本気で戦う準備をしておいてください。」

「待ってくれ、アンリ!」

「オウロさん、兄さんの事お願いします。もし、うちが兄さんに再び会う前に死んでしまうようなことがあれば。」


 アンリの眼がこれまでで一番鋭く光り、紅い眼の睨みつけがオウロを捕らえる。

 まるで、獲物を捉えた獅子のよう。


 そして一言。


「うちは、オウロさんを殺してしまうかもしれません、勝手なのは承知ですが、うちの。」

「それは怖いね、ならそれまで僕がレイを守ってみせるよ。君の心が死んでしまわないようにね。」

「ええ、ではまた。」


 アンリは広場から素早く移動し、数秒後には気配を感じ取れなくなる。



 レイ、オウロとアンリの戦いは終わりを迎えた。


「レイ君!大丈夫かい?すまない、僕が最初からついていけてれば。」

「いや、オウロが来てくれたから、俺の命もアンリの命もまだ残ってる、助けに来てくれて、ありがとう。」

「気にしないでくれ、これからはもっと一緒に動こうと思う。君の妹さんからも依頼されたからね!」

「本当、オウロがいるだけで心強いよ。頼りにさせてくれ、俺のパートナー。」

「ああ、まずはパトラに戻ろうか。彼女はパトラじゃない所に向かったみたいだし。」


 レイは、差し伸べられたオウロの手を掴み立ち上がる。



 だが、その瞬間、


「うぐっ、まただ。」

「レイ君!?まさか、また記憶が!?」

「あ、ああ、頭に何か、流れ込んでくる。すまない、オウロ、俺のこと、頼めるか?」

「任せてくれ、君には指一本触れさせないよ、だから頑張ってきてくれ。」

「ああ、あり、がとう……。」


 レイは再び目の前が真っ暗になり、


 次の瞬間いつもの夢のような空間に連れ込まれた。


 はたして、次レイが目にするものとは。

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