第48話 第5の欠片

 レイは再び暗闇の中に連れていかれ、目をゆっくりと開く。


(うっ、オウロに任せられるとはいえ長くここにいるのも良くない、どこだ、白服の女はどこにいる?)


 レイは暗闇の中では体の自由が効かず、周りを見渡すこともできない。




 そんな中、彼の目に飛び込んできたものが。


「っ!?また、映像か、これは俺の過去の記憶なのか?」


 レイの目には、過去に見たことのある黒髪の男の子と、新しく茶髪の女の子が木造の平家に入って行く。


 その先では、木刀を構えて素振りをしている2人。



 そして、2人を指導する背の高い師匠のような人が。


 その人は女性で、白髪のロングヘアー、歳は30歳前後であろう若い人。

 黒髪の男の子と、茶髪の女の子を指導していた。


(なんだ、そこで修行しているのか?……その構え、俺が使う十華一刀流トウカイットウリュウなのか?)


 白髪の女性は、木刀を腰に構え振るうと同時に目の前の竹が、斬られたことを気付けないスピードで落ちる。


 斬られてから地面に落ちるまで、1秒はあった。


(その動きが、十華一刀流トウカイットウリュウの本当の姿なのか?じゃあ、俺はあんたに教えてもらったってことになるよな、そこにいる男は俺ってことなのか。)


 映像が途切れ、次の場所に移る。



 そこでは、数年成長した黒髪の男の子が映り、木刀を構え周りにと同じように構える子供が。


 黒髪の男の子が木刀を抜いた瞬間、周りに立つ3人の子供が木刀を弾かれる。


「すごい動きだ、早いとか上手いとかのレベルじゃない、周りの人が全く追いつけてなかった。」

「その姿を取り戻すのが、あなたの使命です。」

「っ!?急に現れるな、あんたは。」



 レイの背後に白服の女性が現れた。


 顔の靄が若干薄くなっており、目や鼻の形が少し見えるようになっていた。


「俺は今見当たる人たちを思い出せない、この胸が締め付けられるような苦しさはなんだ。」

「それが、です。相手は覚えていても、自分が覚えていないことに悲しみを感じてるんです。」

「……悲しみ、か。俺は、アンリと思い出を分かち合えないことに悲しみを感じたのか。」


 さらにレイは白服の女性と話し続ける。


「なあ、まだ教えてくれないのか。あんたが誰で、俺の前に出てくる理由を。」

「それはあなた自身で思い出してもらわないと意味がないの、でもあなたは気付いてきてるはず、私が何者なのか。」

「……確信はないけど、あんたは俺の師匠かもしれないって思ってる、でもまだ答えとしては出さない、間違えたら俺に託してくれたその人に顔負けできない気がするから。」

「……さすがですね、あなたは私も想像できないスピードで成長してる。私のことを思い出したら、あなたはいろんな事実を突きつけられると思うわ。その覚悟はあるかしら?」


 白服の女性の問いの意味がすぐに理解はできなかったが、レイは迷わずに答えた。


「覚悟はいつでもできてる、俺は俺を知ることを躊躇わない、失うものは全部失った、後は取り戻すだけだ。」

「良い覚悟です、また会えることを楽しみにしてます。」

「ああ、必ずきてやるから、そこで待ってろ。」



 レイは暗闇から吹き飛ばされ、現実に戻される。





「……っ、うぅ。」

「レイくん!大丈夫かい!?」


 レイは広場に倒れ込み、その周りでオウロはモンスターの襲撃が起きないか見張ってくれていた。


 オウロは初め、レイを担いでパトラまで連れて行こうとしたが、アンリが1人で活動している確証はなく、下手に動くことでもし仲間がいた場合不利になると予測し、その場にとどまっていた。


「ああ、まだ頭痛は残ってるけど、歩くのは問題ない。助かったよ、オウロ。」

「……レイくん、君は本当に成長するね。初めて会った時からは想像できないほど表情が豊かになった。」

「そうか?……まあ、いろんな感情を思い出せて忘れてたものも少しずつ取り戻せてきて、俺も変わりつつあるのかもな。それもこれも、オウロがきっかけを作ってくれたおかげだ、本当に感謝してる。」

「きっかけはきっかけだよ、今の君になれてるのは君が進もうって決めて曲げずに、負けずに突き進んできたから。僕はそれだけで嬉しいよ。」


 オウロが手を差し伸べ、レイはその手を取り立ち上がる。


「戻ろう、一旦パトラで休息をとってレイくんが復活できたらカラマタに戻ろうと思う。」

「分かった、アンリのことも気になる、パトラにいる間に情報を手に入れたいから手伝ってもらっても良いか?」

「もちろんだよ、僕にできることならさせてくれ。」


 2人は微笑みあい、パトラまで戻った。



 レイとオウロはパトラで宿を取り、2日間過ごした。


 怪我こそ大きくなかったが、アンリのこと、読心舞踏陣ドクシンブトウジンについて何か情報を手に入れる為に、敢えて2日間滞在していた。


 アンリのことは、ギルドで聞き込みをするも数ヶ月前に現れパトラのギルドを盛り上げる為に頑張った女戦士、という情報しかなかった。



 そして2日経過したタイミングで、レイとオウロはカラマタに戻ろうとしていた。


「アンリについてはこの町だけじゃ難しそうだな、カラマタとアテネでも調べてみるか。」

「僕も同行するよ、いつ襲われるかわからないからね。じゃあ、行こうか─。」


 2人が町を出ようとした瞬間、


 ギルドから大きな声が聞こえる。




 その内容は、



「大ニュースだ!騎士団が、したって!」

「っ!?」


 レイが予想すらしていなかった情報が入り込んできた。はたして、セントことセレジアは無事なのか。

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