第34話 第3の欠片
「さて、今日も話しましょうか。」
セレジアとレイは、ソファに腰かけ向かい合って話し合いを始める。
セレジアは足を組み、外での雰囲気とは別物となり気を張っている様子が無くなる。
外では、壮麗の権化と呼ばれているだけあり、皆に手本とされるような行動をとる。
だが、自分の部屋でレイと話すときは、素の自分を出しているように見えた。
その姿を見るのに、レイはもう慣れていた。
(人って、こんなに繕うことができるんだな、仮面を持ちすぎててセレジアって人がどれが本物か分からなくなる。)
レイは顔に出やすいのであろう、このようなことを考えていると、セレジアの鋭い眼光が突き刺さった。
追及をかわすように、
「ああ、頼む。まず、俺の方は進展がない、あれから数週間経つけど記憶も感情も思い出せたものはない。」
「やはり、何かきっかけが必要なのかもしれないわね。分かったわ、私も、
「いや、俺だけじゃ手の届かない所でもセレジアなら届く可能性がある、ゆっくり待つよ。」
「……強いわよね、あなたって。」
「そうか?セレジアに言われても嫌みにしか聞こえないけどな。」
レイの情報も、セレジアの情報も特に進展は無かった。
「そういや、騎士団長、白銀の戦神と、ギルドの猛者、鮮血の銀髪の見た目ってほとんど同じだよな?何で誰も気付かないんだ?」
「簡単なことよ、騎士団長の姿をアテネの人はほとんど見たことない、理由は分かるわよね?」
「……騎士団が行動を起こすとき、みんなお辞儀をしているからか。」
「そう。いつからこのような事をしているのか不明だけど、アテネの人は必ず守っている。もし、私の姿を見る人がいるとしたら。」
「俺みたいな外者か、反抗勢力、って所か。」
レイは納得がいき、騎士団長と鮮血の銀髪が同一人物だと思われない理由を理解した。
話しを終えた後、静かな空間が2人を包み込み、密会も終わりを迎えようとしたタイミングで、レイが問いかける。
「なあ、騎士団長のセレジアならオオカミの姿をした二足歩行型モンスターについて何か知らないか?多分、2体はそっちに送られているはずだ。」
「まさか、騎士団に捕獲した2体を送ったのってあなただったの?」
「ああ、正確には俺と仲間のもう1人が捕らえたんだ。ただ、どうもあのモンスターは不思議な感じがしているんだ。」
「不思議ね、例えば?」
「2足歩行オオカミ型モンスターと戦った時、心なしか動きが人みたいだなって思ったんだ。」
レイの言葉に、セレジアは目を大きく見開く。
「そう、どうかしらね。」
「……俺には話せない内容なのか?」
「……そうだったわ、あなたは相手の微妙な反応でも見逃さない憎らしい目を持っているんだったわね。ただ、警告するわ、これ以上話を聞いた場合、あなたは人生を棒に振るわよ。」
「俺の人生を?」
レイは考えた。
何がきっかけで、自分の人生を棒に振るような事実になるのか。
だが、自分の答えがまとまる前に、口から自分の意思が溢れていた。
「直感だけど、俺はもう既に人生を棒に振る道に入ってる気がする。それに、今の道から逃げたとしても、俺にはいい事がない気がする、頼む、教えてくれ。」
「直感にしては、覚悟が決まっているような目ね。分かったわ、私が知っていること話すわね。」
二足歩行オオカミ型モンスターは、騎士団の牢屋にしまわれていた。
2体が運ばれており、騎士団でもまだ研究しているところだった。
その中で、気になることが2つ浮上した。
1つ目、亜種モンスターとは違う思考をしているように思えた。
牢屋に入れられたオオカミ型のことを調べるべく、騎士が数人で入ると急に暴れ出し確実に1人を排除しようと爪を伸ばしてきた。
1人騎士が負傷したものの、すぐに治療したことで大事にはならなかった。
その動きが、オオカミ型の1番の特徴であろうと予測された。
そしてもう1つ、周囲の町から囚人が姿を消していた。
アテネの周りの町で、罰せられた囚人達が突然姿を消しその行方を誰も知らないという状況だった。
「そいつらの行方は騎士団でも追えてないのか?」
「ええ、どこにいるのか全く分かってないの。ただ……、私はオオカミ型と消えた囚人が無関係だとは思っていないの。」
「2つに何か関係があるのか?人がモンスターになるなんてあるわけないだろうし─。」
「本当にそう思う?」
セレジアの目が鋭くなり、レイは背中を冷たいものが流れ、五臓六腑が震えた気がした。
「まさか、囚人がモンスターになるっていうのか?そんなの、一度も聞いた事ないぞ。」
「ええ、正直私の憶測でしかない、まだ確定にまでは至ってないの。でも、もし人工的にモンスターが作り出されるとしたら、世界の均衡が一気に崩れるわ。」
「……モンスターと人間が生きる場所を奪い合う世界で、モンスター側が有利になりかねない……ってことだよな。」
「そうよ。人はすぐに成長できない、生まれてから騎士になるとしても、18年は最短でかかる。モンスターの生態はまだ分かってないことが多いけど、成長過程を吹っ飛ばして、第一線に出れる個体が生まれるのは、危険すぎるわ。」
セレジアの話を聞いたレイは、頭が内側から沸騰されるように熱くなり、全身が焼かれてるように痛みを覚える。
(まただ、またあの時の感覚が襲ってきた。この感覚、記憶と感情が戻ろうとしてるのか。うっ、やっぱり身体中が苦しんでる、何か対処できないか─。)
「レイ!レイ!」
レイが苦しみ始め、もがいている姿を心配したセレジアが、レイのそばにしゃがんでいた。
「セレ、ジア。」
「その雰囲気、私と戦った時と同じよね。まさか、この前と同じことが起きようとしてるの?」
「たぶん、そう、だ。セレ、ジア、離れ、て、くれ。」
「いや、私は離れないわ。苦しんでるあなたを放っておく程、私は人手なしじゃない。何かして欲しいことあったら言ってちょうだい。」
「……あり、が、とう。」
レイは目を瞑り、次の瞬間目の前に白服の女性が現れる。
「また、あんたか。なあ、そろそろ俺と話してくれないか?」
「話したいけど、話せないの。」
「どういうことだ─。」
「それより、今のあなたは感じてるでしょ、新しくその心に生まれた感情を。」
レイはそっと自分の胸に手を当て、身体中が熱いことを再認識する。
「この全身の熱さが、どうしようもない苦しさが、俺の体を焼いてくるみたいな感じがする。これは、なんだ?」
「それが、怒りよ。あなたに、新たな出会いが生まれるきっかけになる。」
「怒り?」
レイに新たな感情が芽生えた。
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