第33話 人型の謎

 10年前、この世界イリオスでも未だに記録として残されている、大規模スタンピードがカラマタを襲った。


 モンスターの数は、100体をゆうに超える。


 通常のスタンピードが約30体であると考えると、3倍以上の大量のモンスターが押し寄せた。

 カラマタは数千人が住む大きな都市であったが、当時はギルドが今ほど栄えていなく抵抗虚しくカラマタは壊滅した。


 多くの死傷者が生まれ、カラマタはモンスターに乗っ取られたと周りの町には噂が出るほどだった。




 そこへ、一筋の光が差し込んだ。



 マクセル率いる、騎士団10人で構成された部隊が投入されたのだ。


 スタンピードのモンスターは、C-Eランクの個体がゴロゴロとしており、精鋭部隊ですら苦戦を強いられると思われた。



 だが、マクセル騎士団部隊は違かった。


 どんな生き物にも、弱点は存在する。

 マクセルは、自分の部隊に索敵を最優先に実行させ、モンスターの種類、配置、等事細かに分析していた。


 そして導き出した、最適解。


 を仕掛けたのだ。


 その目を頼りに戦闘するモンスターが大半だったため、マクセル騎士団部隊は一番の強敵がいる場所を最初に攻め、モンスターを討伐。


 ボス級を失ったモンスターは、統率が取れなくなり暴れ出した。


 その隙を、マクセル騎士団部隊は狙い確実に1体ずつ殲滅していった。


 その結果、1時間足らずでカラマタの奪還に成功、その雄姿は世界に広がった。




 だが、カラマタにもともと住んでいた人たちは1割未満にまで減ってしまった。

 モンスターにやられてしまったのだ。



 現場は、悲惨なんて言葉では表せない程、脳に焼き付いて離れないものだった。


「マクセルは、騎士団で活躍してカラマタに残ったってことだよな?もしかしたら、騎士団長とかなれたんじゃないのか?」

「……まぁ、話がなかったわけじゃない。でも、俺はカラマタの作戦の中で気付けた、結局、アテネに強い奴が集まるってことはアテネ以外の町が危険に晒される可能性が高くなるんだって。」

「……だから、騎士団を辞めてギルドを開いたのか?」

「それもあるし、騎士団にはもう1人子供ながらに騎士団長になれる風格を備えていたお方がいたんだ。今、まさしく騎士団長を任されている─。」

「セントか?」


 レイの口から予想していなかった言葉が出てきたため、マクセルは目を大きく見開く。


「セント騎士団長を知っているのか!?」

「ああ、前にオウロとアテネに行った時に凱旋に遭遇したんだ。その時に、話を聞いた。」

「そうか、レイの言う通りだ。セント様は、俺が騎士団にいた時は5-6歳くらいだっただろう。だが、努力量と追及する精神は騎士団でトップクラスだった。」

「……すごいな、そんなに若い頃から。何か理由があったのか?」

「そこまで聞いたことはない。ただ、俺の信念はセント騎士団長を模範にしているんだ。騎士団を辞めて5年、俺はセント様がお話されてたって言葉を絶対に忘れない。」


 当時10歳を超えたくらいであろう、セントの言葉をマクセルは今でも胸に刻んでいた。


、それ、すごいことだよな。」

「ああ、でもあの方はやり遂げると俺は思ってる。まあ、本人と話す機会はないだろうから、頭の片隅にでも置いといてくれ。」


 レイはマクセルと別れ、疲れを癒すべく宿舎に向かう。


 そして眠る前に、


「セレジア、子供のころから周りに認められるような努力家だったんだな。……明日聞いてみるか。」



 セレジアの事を思い、レイは眠りについた。




 翌日、陽が真上に昇りきるころ、レイの姿はアテネにあった。


 今日は3度目の顔合わせをする日。


 集合場所で待っていると、


(ん、この気配、セレジアが来たな。後は、もう2人一緒?2人きりじゃなくていいのか?)


 レイはセレジアの気配がする方向を見ると、


「お姉さん、1人でどこに行くの!」

「俺たちとお茶しようよ。」

「……はぁ。」


 セレジアの後を2人の傭兵らしき男が付きまとっていた。


 セレジアは、銀髪のポニーテールに、大きい碧眼が少しつり上がり、眼力が強い。

 小顔且つ綺麗な顔たちで、スマートな体系、足が特に長いため男を虜にしても不思議ではない。


「セレジア、人気だな。まあ、雰囲気怖いけど美人だから仕方ないか?」

「……ぁ。」



 レイは見つめられていることを察し、セレジアはその強い眼力でお男2人をどかすように訴えているのが分かる。


(俺がやるのか?……そういえば、オウロがプレッシャーを放てるとか言っていた気がするな。やってみるか。)


 レイは男2人に集中し、目を閉じ、呼吸を整える。



 辺りには自分と、男2人以外存在しないレベルまで集中力を高め、目を見開くと共に闘気を放った。



 すると、


 男達はその場で足が震え、セレジアに付きまとうのを辞めた。


「え、出来たのか?」

 セレジアは驚くレイをよそ目に、店に入ろうとする。


「あ、おい!」

「よく出来ました、レイ。」


 褒めると共に、セレジアは中に入る。


「なんだ、今褒められたっていうより、出来て当然みたいな反応だったな。俺の事、やっぱり何か知っているのか?」


 レイもセレジアを追いかけ店に入る。




 奥の席でセレジアは椅子に腰かけ待っていた。


「さすがだったわね、レイ。」

「セレジ……セレジアさんは出来て当然みたいな反応していなかったか?」

「そうかしら?考えすぎだと思うわよ。」

「本当に読めないな、あんた。」

「あなたに言われるのは心外ね。」


 今日入った店は、ステーキが有名なお店であった。


 セレジアがオススメという、牛のシャリアピンステーキとパンを2人分オーダーした。


 レイは、ステーキということ以外何が出て来るのか理解できなかったが、出てきたメニューを見て心からおいしそうだと思えた。


 300gのステーキに、きつね色に焼かれた玉ねぎが乗せられ、赤ワインをベースに作られたソースがかけられる。

 パンは焼きたてで、外はカリッと、中はもちもちしたもの。

 さらに、彩野菜のサラダもセットで並べられ、周りの席ではパンが1人2個だったが、セレジアとレイの席には1人5個ずつ置かれていた。


「セレジアさん、なんか多くないか?」

「だって、私だけ多く食べてたら目立つでしょ?それに、これくらいの量ならあなたも付き合えるでしょ?」

「まあ、美味しく頂くけど─。」

「何?文句あるの?」


 鋭いセレジアの眼光に、レイは何も言わず従い食事を進める。


 食事中のセレジアは、とても幸せそうに見えるのはいつものこと。

 だが、レイには


(いつもストレスなのか、疲れなのかいろいろ苦労しているんだろうな。楽しそうな姿が、こいつには似合っているけど。)

「なに、私の顔に何かついてる?」

「いいや、今の楽しそうな顔でいつも話してくれたら俺も気が楽だなって思ってよ。」

「……やっぱりあなたの事嫌いだわ。」

「そりゃあ、すみませんね。」



 食事を終えた2人は、セレジアの家へと向かった。


 そこで、2足歩行オオカミ型モンスターの話しが始まった。

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