第29話 第2の命

 王都で2日間治療を受けたレイは、皆が驚く速さで通院が必要なくなるまで回復した。


 助けてくれた人たちにお礼を言い、また5日後には都市アテネに来ることを頭に刻み、カラマタ行きの馬車に乗った。




 カラマタに戻れば、


「おおっ!レイ!大丈夫だったか!」

 外を歩いていた、マクセルが駆け付ける。


「マクセル、悪い、何日も空けてしまって。」

「何気にするな!それより、アテネのスタンピードに参加したんだろう?怪我はなかったのか?」

「ああ、スタンピードはなんとか耐えて生き残れた。まあ、ほぼ3日間アテネにいることになったけど。」

「無事なら何日離れていようが問題ない!オウロも1日空けていたが、今は戻ってきているしこっちのクエストも多くはないから安定しているぞ!」

「そうか、オウロ戻ってきたんだな、ギルドにいるか?」

「さっきまではいたが、今はどうだろうな?行ってみるか!」


 レイとマクセルはスタンピードの情報を交換しながらギルドに向かう。

 そして、レイに再び強い痛みが現れ、恐怖の感情を取り戻したことも話した。


 そのままギルドに辿り着き、


「いらっしゃいませ……レイさん!」

「エリ、心配かけたな、すまない。」

「良かった、ご無事で!」

「え、レイさま!」


 受付をしていたエリと、受付の中から出てきたリーナが超特急でレイの前に迫る。


「怪我は、治療されたみたいですね、アテネでですか?」

「ああ、スタンピードで少し怪我をして。」

「でも、スタンピードを生き残れるだけですごいことです!何か、ご自分の事について情報は手にできましたか?」

「いや、そこは進展がなかった。後は、アテネの飯もかなり旨い事が分かったくらいだな。」

「えっ!いいですね!ぜひわたくし達も行きたいです!いいですよね、ギルド長!」

「ん?あ、ああ!遠慮なくいって来てくれ!」


 マクセルの顔が、2人同時に抜けられるのは厳しいと思いながらも許可していることをレイは察していた。

 盛り上がっているところに、


「ただいま帰還しました……レイ君!」

「おおっ、オウロ。心配かけた、やっと戻ってこれたよ。」

「良かった、帰ってきてくれたんだね。」


 レイとオウロは固い握手をする。


「当たり前だ、ここは俺のホームだって思ってる、嵐が吹いても帰って来るよ。」

「さすがレイだね、色々聞きたいところだけど、今日は用事があるから、明日からまた一緒に行動しないかい?」

「ああ、よろしく頼む!」


 オウロはクエストを報告しに受付に行き、エリが対応する。


 レイもギルドを出ようとすると、


「ん?レイ、ちょっと待て。」

「マクセル、どうした?」

「その剣、刃こぼれしてないか?」

「え?」


 レイは剣を手に持つ。

 すると、黒をベースに、刃の部分が銀色に輝く剣だが、刃先が割れており、全体的に傷が多いことが分かる。


「スタンピードの時にこうなったのか?」

「……たぶん、そうだな。」


 レイは心当たりがあった。


(この刃こぼれ、セレジアの攻撃を弾いた時に生まれたに違いない。あいつの攻撃、後で詳しく教えてもらうか。)


 セレジアの銃口が付いた特殊な剣から放たれた攻撃が、レイの剣を壊しかけていたのは想像しやすかった。


「ちょうどいい、鍛冶屋に見てもらってこい!今の剣より手に馴染むものがあるかもしれないぞ!」

「そうだな、スタンピードのおかげでお金も稼げたし、行ってみる。」

「あ、じゃあわたくしもご一緒してよろしいですか!?」

「ああ、頼む、リーナ。」


 レイはリーナと共に、鍛冶屋へと向かった。

 心なしか、レイはエリから強い視線を送られていた気がしたが、敢えて振り返らなかった。




 鍛冶屋へは、ギルドから5分程度歩いた所にあった。


「そういや、エリとリーナは戦うことはあるのか?」

「基本的にはありませんが、わたくしも姉さんも、細剣の指南は受けておりますので、自分の身ぐらいは守れますよ!」

「2人の武器は細剣なのか。オウロは格闘で、マクセルは斧、アテネで見た騎士団長は特殊な武器だったな。」

「得手不得手がありますからね、もっと手に馴染むものが見つかるといいですね!」


 2人は鍛冶屋に辿り着き、中に入る。

 1人の小柄で白髪の男が出迎える。

 体には多くの傷や火傷があり、頭に赤いバンダナを巻いている。


「いらっしゃい、おお、生きて帰ったかい、レイ。」

「おじさん、戻ってこれたよ。悪いんだが、剣を新調したいんだ、おすすめはあるか?」

「お前さんの剣か、そのタイプはこの辺りか?」


 レイは青を基調とした剣を受け取る。


 手に構え、握った感覚や重さを確かめていく。


「あまりピンっときてなさそうじゃな。」

「んー、そうかもしれない。オウロに言われたんだけど、今の剣も最適じゃないかもしれないってアドバイスされたんだ。」

「ふむ、ならレイは特殊形状の武器、お前さん向けの武器がいいかもしれんな。例えば、これとか。」


 鍛冶屋のおじさんは、火事場の奥から持ち手が真ん中にあり、刃が左右に付けられている両刃剣を渡す。


「すごい形ですね、間違えて手を切っちゃいそう。」

「それは、過去に3人くらい使い手はおった。どうじゃ?」

「うーん、やっぱり違うみたいだ。」

「そうか、ならわしの工房に入ってくれ、何か良いものがあるか触ってみてくれ。」

「分かった、助かる。」


 レイとリーナは工房に入り、多くの武器を見ていく。


 試作品と鍛冶師は呼んでおり、こだわりが強い人やレイの様に馴染むものを見つけられていない人向けに複数パターン作っているという。


 大きな鎌の武器や、3mほどある棍棒、クロスボウに短剣が付けられた物など多種多様であった。


 その中でレイは引き寄せられるようにある場所に向かう。


 そこには、


「これ、珍しいな。剣と似ているのに、刃が片側にしかない。」

「ああ、それは正直失敗作に近いんじゃ。加工しにくい、黒い鉱石があると言われて試しに武器にしてみたんじゃが、わしにはそれ以上形を変えれんかった。」


 レイが手に取ったのは、黒い刃が1mほど、持ち手は拳2個分程度、真っ黒な剣に、武器をしまう入れ物が付いたもの。


 それは、のような見た目だった。


「それは、流石に合わないじゃろう。」

「いや、直感だけどこれがいい気がする。重さ、握りやすさ、構えまでの動作、無駄なく使えそうだ。これ買ってもいいか?」

「まあ、世に出てもらえるなら嬉しいが、戦闘員にとって2じゃ。扱いが難しいと思ったら、すぐ言ってくれよ。」

「分かった、費用は?」

「銀貨3枚でええよ。」

「了解。」


 レイは、鍛冶屋の店主に銀貨6枚を渡し、外に向かう。


「ああ、待て、レイ!3枚でいいんじゃぞ!」

「鍛冶屋の武器は、銀貨5枚だろ?もう1枚は、俺の命を守る武器を一緒に探してくれたお礼だ、大事に使わせてもらうよ。」

「あっ、レイさま!」


 レイとリーナは鍛冶屋を後にする。


 鍛冶師はレイの事に感心していた。


「あやつ、うちの武器は昨日銀貨5枚から4枚に値下げしたというのに、なぜ5枚のこと知っていたのじゃ?……敵わんな、レイには。」


 新武器、刀を手に入れたレイは翌日からクエストに励んでいた。

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