第28話 密会と約束
レイはセレジアに連れられ、王城近くを歩いていた。
王城は、50mほど高さがあり金色をベースに作られた皆が憧れるヨーロッパ風のお城の形をしており、庭に多くの花が咲き管理人であろう人達が手入れをしている。
また、城門は固く閉ざされており、騎士団が守っている。
城につながる塀も高く、そう簡単に侵入は出来ない作り。
その王城を通り過ぎ、近くに建てられている大きな一軒家に向かう。
アテネの民家より数倍大きく、外からでも貴族が住んでいるのはすぐに理解できる。
レンガ作りの家になっており、セレジアはそこに向かっていく。
(ここって、どう考えても貴族の家だよな。王城も、騎士団の宿舎も近い、まさかセレジアの家か?)
セレジアはドアの鍵を開け、
「さあ、入って頂戴。」
「え、いいのか?」
「私がいいと言っているのだから、気にしないで入りなさい。」
「わ、分かった。」
セレジアに続いてレイも家に入っていく。
玄関を通り、奥の扉を開けると、30畳ほどのリビングに出る。
レイは今まで見たことのない家具や、装飾品に驚きながら見渡す。
「これが王族の家。」
「そうよ、ここは私の家、適当にかけて頂戴。」
セレジアは白い大きなソファに腰かけ、レイは対面するように同じくソファに腰かける。
そして、
「さて、と、もういいわね。」
「え?」
レイは持ち前の察知能力で感じ取った。
セレジアの雰囲気が一変したことを。
「レイ、ここは私とあなたしかいない。私は、あなたを利用する、だからあなたも私を利用していい、腹を割って対等に話しましょう。」
「あ、ああ、セレジアさん。」
「セレジアでいいわ、わざわざあなたが呼び辛い名前で呼ばれたくないもの。」
「わ、分かった、セレジア。」
セレジアは、真剣な表情で話す一方でリラックスしているように見えた。
「いいのか、もうセレジアって仮面だけで。」
「いまさら何を、あなたはもう気付いてる、私が騎士団長であって、鮮血の銀髪ってことも。なら、隠すだけ無駄じゃない。」
「割り切ってるな、セレジア。」
「自分の家だからね、気を張る意味はないわ。まあ、あなたが約束を破ったり変なことしようとしたら凍り付けにするだけだから。」
「その言葉、本当に怖いな。」
「それはそうよ、私は本気だし、そもそもレイの事嫌いだから。」
レイはこの場において主導権を握られ、どうにか自分のペースに持っていきたいがセレジアが乱れないテンポや口調の為どうしても覆せない。
「嫌いな人間を招き入れるなんて、変わってるな。」
「なに、早速凍り付けにされたいの?」
セレジアの鋭い眼光が、レイをを突き刺し無言でレイは首を横に振る。
「ふぅ、まあいいわ、ここに連れてきたのは、改めて取引の確認するためよ。」
「セレジアが提示した3つと、俺が依頼した2つの事だな。」
「そう。端的に言えば、私に必要以上に関わらず、口外することがなければあなたは私を利用できるって思っていいわ。」
「さっき思ったんだけど、セレジアはそれでいいのか?俺は、知りたいことを知れたら利益になるけど、あんたに直接の利益になることを俺は提案されていない。」
「変な人ね、取引相手の事を考えるなんて。」
「だってよ、セレジアとは長い付き合いになりそうだ。だったら、もっとwinwinな関係の方が楽じゃないか?利用もいいけど、助け合う方がいい気がする。これ、俺理論。」
レイの言葉に、一瞬セレジアは目を大きく開く。
だが、落ち着ている雰囲気は乱さず、
「なら、私がどんな提案をすると思っているの?私に直接利益が出る事─。」
「セレジア、今困ってないか?」
「え……。」
レイの言葉は、セレジアの心臓を撃ち抜くほどに正確かつシンプルな問いだった。
(この人、感情と記憶を無くしているみたいだけど、この察し能力は何?ただの勘?それとも、何か別の力?)
「それは、何か確証でもあるのかしら?」
「ああ、さっきのカフェにいる時、パンケーキを食べたセレジアの顔はとても楽しそうで綺麗だった。それがあんたの本当の姿だとしたら、結局セレジアは自分を騙して常に生きているんじゃないのか?」
「……言ったはずよ、余計な詮索は─。」
「本当に余計なのか?」
レイは徐々に場を掌握していく。
「美味しいものを食べた時、俺は楽しい以外の感情が今はない。もしかしたら、他のみんなもそうじゃないかと思ってる、セレジアも例外じゃないって。」
「それだけの理由で、私に関わるつもり?それこそ、あなたに利益はないわ。」
「何かをしてあげたいって気持ちに、理由がいるのか。俺は友から教わった、取引をするなら、もっと公平にいかないか?俺に利益があるなら、あんたにも利益が有って然るべきだ。」
「……本当、あなたの事嫌いだわ。私の事を知っているような話し方、もはや嫌みにも聞こえる。でも、そうね、1つだけ追加するわ、あなたの記憶について今後教えなさい。」
「俺の、記憶?」
予想外の言葉に、レイは疑問を覚える。
「俺の記憶って言っても、まだほとんど戻っていない。感情だって、楽しさ、恐怖、この2つしか分からない。そんな俺の記憶が必要なのか?」
「ええ、あなたが依頼してきた
「……なるほど、騎士としてアテネを守る仮面を付ける時に役に立つか、分かった。じゃあ、今時点で俺が思い出した記憶を話すな。」
レイは、感情を取り戻す際に目に映った情景を説明した。
「白服の女性、火事で燃える家、ピンチの時に思い出される記憶、死んではいけないという言葉、統一性もないし謎だらけね。」
「ああ、セレジアは頭は良さそうだから、道筋を作れそうだったら作って欲しい。」
「頭はって何?」
「すまない、頭も良さそうだから。」
言葉の選択を間違えると、命が危ないと察したレイは咄嗟に言い換えた。
心の中でボソッと、
(セレジア、意外と繊細なんだな。)
「今、私が繊細で面倒だって思ったわよね?」
「面倒とまでは思っていない……あっ。」
墓穴を掘ったことを認識したが、セレジアは小さく微笑む。
「あなた、分かりやすい人ね、まあそのくらいの方が信頼できそうだわ。」
「仮面を3つ被ってるセレジアよりは、分かりやすいだろうよ。今日はこれくらいで良いか?そろそろ医務室に戻らないと。」
「ええ、これからもいい関係でいましょう、レイ。」
「ああ、美味しいお店ありがとうな、また頼む、セレジア。」
レイはそっと扉を開け、外に出ていく。
レイもセレジアも1人になり、心の中で呟く。
(やっぱり、セレジアは変わり者だな。でもこれから俺が変わる─。)
(レイがいたら、何か別の未来が待っていそうな気がする。期待しているわよ、レイ、私の未来を変える─。)
そして同時に口に出す。
「きっかけとなって。」
2人は変わり者同士だが、ある意味似た者なのかもしれない。
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