第7話 和気あいあい

 イノシシ型モンスターを2体狩猟し、レイとオウロはペレの村に戻った。


 傭兵団の施設に向かい、クエスト達成報告を行う。


「お疲れ様です、お待ちしておりました、内容確認致します。」

「乱入もあって、2体狩猟してきました、よろしくお願いします。」


 オウロが赤い魔石を置き、受付嬢が確認を進める。


 辺りからは、ヒソヒソ声が。


「なぁ、あいつが迷い人を連れ去ろうとしてるって噂の。」

「そんなことさせるわけにいくかよ、せっかく楽して稼げるのに。」


 そんな言葉を、オウロはしっかりと聞いていた。


 そこへ、確認が終わった受付嬢から、


「お待たせしました、報酬は本来銀貨7枚でしたが、追加狩猟も含めて、銀貨12枚でのお渡しです。」

「ありがとうございます、はい、レイ君、6枚ずつ。」

「あ、ああ、こんなに貰っていいのか?イノシシ型って、虎型より弱いよな?」

「そうですね、虎型モンスターの方が強いです。基本的に、1体最低銀貨8枚ですし、先日皆様にお願いしたものは12枚のものとかでしたよ。」

「……そうなのか。」


 レイは傭兵の3人に騙されていたことを認識できたが、怒りを表すことはない。


「そうだ、レイ君はペレの村に正式に加入してる傭兵じゃないよね?」

「ええ、レイさんは臨時で参加頂いてる立場です。」

「それじゃあ、僕が彼を連れて行っても問題ないよね?」

「まあ、私がお止めすることはできませんので、お2人の判断にお任せします。」

「ありがとうございます、それじゃあレイ君、行こうか。」


 オウロに手を引かれ、レイは傭兵団の施設を出て行こうとする。


 すると、


「待てよ!そいつをどうするつもりだ!」


 入り口近くに立った2人に向け、背中から傭兵達5人に声をかけられる。


「どうって、それは僕たちの自由だろ?」

「そこの迷い人は俺たちと一緒の方が、いい世界を見れるぞ、そいつについて行っていい事があるのか?」

「……そうだね、じゃあレイ君に決めてもらおうか。」

「え、俺が?」


 オウロの言葉に、レイは目を見開く。


「そんなの、オウロが決めてくれていいーー。」

「だめだ、僕も君に無理強いをしたくない、君が君の意思で選択をしてほしい。それを、言葉にしてくれ。」

「……俺は。」


 レイの中を不安が駆けまわる。

 初めて訪れた地で生業を見つけてもらい、助けてもらった恩がある。


 しかし、利用されていることにはオウロのおかげで気付けた。





 今のレイが下した決断は、


「……オウロ、俺を連れてってくれ。」

「ああ、了解した、そういうことだ、レイ君はもらっていくよ。」


 オウロはレイを施設の外に出すと、


「あ、待てって!」


 追おうとする傭兵に対し、

 ガゴッ!という大きな足音と共にオウロが厳しい表情で睨みつける。

 その眼光は、傭兵達を怯えさせるのに適していた。


「これは僕の慈悲だ。レイ君がこの村に来てから、7回クエストに出ている。その同行者として、あなた達が毎回参加していた、そして戦闘を実際にしたのは9割がレイ君だった。それは、この傭兵団との契約違反に当たるよね。」

「な、なんでお前がそんなことーー。」

「僕は手に入れたい者は必ず手にする。そして、彼は勇気を振り絞って意見を話してくれた。すごいことをね。だから、レイ君にも僕にもこれ以上邪魔をしてくれるなよ、チンピラ。」


 オウロも施設を出て、そのまま村を出る。


「このままカラマタに向かっていいかい?」

「ああ、ここからどのくらいで着くんだ?」

「歩いてだから、1時間くらいかな、馬があれば20分もあれば着くんだけどね。」

「オウロは馬に乗れるのか?」

「乗れるよ、レイ君は乗ったことあるかい?」

「いや、ない、と思う。」


 そこからオウロが道案内をし、レイはカラマタまで辿り着いた。



 カラマタはイリオスの世界で、特にギルドが栄えている町になる。


 ペレの村より2回りは大きな地であり、商いや鍛冶屋、自警団も多く、今のレイの目には初めて映るものばかりだった。


 町を探索する前に、オウロはレイをギルドへと連れて行く。

 そこで、1人の大柄の男と、優しい声をかけてくれる女性が1人立っていた。


「あら、お帰りなさいオウロさん。」

「帰ってきたか、オルデン。隣にいるのが、お前が話してた奴か?」

「そうだよ、はい、自己紹介をお願いしていいかい?」

「ん?あ、ああ。」


 レイは2人の前に立ち、近くのテーブルで話しているギルドメンバー達も視線を向ける。


「俺は、レイ。ペレの村で傭兵をしてた、よろしく。」

「うん、いい体つきをしているな、俺ほどではないが期待が持てるな。よしっ、まずは筋肉のつき方を確認してーー。」

「ギルド長、そんなことを始める前に大切なことがたくさん残ってますよ。登録申請やクエストのランク説明など終わらせてから、ギルド長のやりたいことをしてください。」

「さすが、ギルド長もあなたには敵いませんね。っと、そうだ、ギルドのお話をしてもらう前に。」


 オウロはレイに手を差し伸べ、レイはその手に疑問の表情を浮かべる。


「な、なんだ?」

「ようこそ、カラマタの町へ!僕たちは君を歓迎するよ、レイ君!分からないことは何でも僕達に聞いてくれ!」

「分かった、ありがとう。」


 レイの新たな生活が始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る