第6話 背中合わせ

 レイはオウロとともにクエストを開始した。


 今回の目標は、イノシシ型モンスターの狩猟。

 ペレの近くでは比較的多く現れる個体で、虎型モンスターよりも一回り小さい全長4m程度。

 だが、スピードとパワーは虎型よりも優り、その赤い体とナイフのように尖った牙で突き刺されれば命は確実に落とすと言っていい。


 そんなモンスターの狩猟に、2人は臨んでいた。


「なあ、オウロ、何で俺はあんたとクエストに行ってるんだ?」

「ん?まあいいじゃないか、ここで会ったのも何かの縁だよ、出会えた奇跡に感謝してーー。」

「いや、わざわざ俺に会いにきたって言ってただろ。」

「おう、いい記憶力だね、それが記憶を失う前の君の実力なのかな?」

「さあ、無くしてるもののことは分からない。」


 ペレから20分ほど歩くと、林地帯に出る。

 クエストの、イノシシ型モンスターが現れる場所だ。


「さて、1体狩猟して帰るのが今回のクエストだ、何か作戦はあるかい?」

「作戦?考えたことないな、目の前に敵が出てきたら倒す、それでいいんじゃないか?」

「シンプルでいいね、でも少し

「楽をする?どういう意味だーー。」


 話してる最中、レイは気配を察知する。


「4時の方向、50mくらい先に現れたぞ。」

「え?そんな正確に分かるのかい?」

「俺を尾行してたあんただ、信じるかどうかは任せる。それじゃあ、行ってくるーー。」

「ちょっ!ちょっと待った!」


 剣を構え、気配のする方向に向かうレイをオウロは手を掴んで止める。


「なんだ?目の前に敵がいるんだから、早く倒さないと。」

「それはそうだけど、レイ君はイノシシ型モンスターと戦ったことあるのかい?」

「ある、はずだ。確か、突進しかしないけどその威力はここら辺の木なら簡単にへし折ってた気がする。」

「さすが、そこまで理解してるんだね。じゃあ、僕とは背中合わせで戦ってみないかい?」

「背中合わせ?」


 オウロの言葉にレイは疑問を浮かべていると、そこにイノシシ型モンスターが木を薙ぎ倒しながら迫ってくる。


「来たぞ!レイ君、僕に寄ってくれ!」

「え、ああ。」


 レイはオウロにくっつく距離に位置し、オウロは金属製の装備を手に嵌める。


 銀色に輝き、頑丈なのはみて分かる。


 腰を落とし、右拳を引きイノシシ型モンスターの前に立ち、


初式ショシキ雷光ライコウ。」


 イノシシ型モンスターと残り30cmの距離になった時、腰を落とし引いた右拳を放ち、掌底突きがイノシシ型モンスターの顔面を捉える。


「グゴッ!?」


 掌底突きから風圧も生まれ、イノシシ型モンスターは目を回してるように見える。


「今だ、レイ君!」

「ん?あ、ああ!」


 レイは剣を構え、顔を上げたイノシシ型モンスターの顎に突き刺し、そのまま腹まで切り裂く。

 一連の動作は約3秒の事。


 2人の連携がイノシシ型モンスターを完封し、赤色の魔石に変わり地面に落ちる。



 イノシシ型モンスターを察知してから、約7秒で決着がついた。


「お疲れ、レイ君。」

「あ、ああ、助かった。」

「嬉しい言葉だ、ありがとう。」

「この魔石は、オウロが持っておいてくれ。俺にはどう扱えばいいか分からないから、とても扱いが大変らしいし。」

「え?そんなこと、誰に言われたんだーー。」


 オウロが問いかけた途端、彼の背後からもう1体のイノシシ型モンスターが姿を現し、轟音と共に突進してくる。


「っ!?もう1体ーー。」

「オウロ、トドメは任せる。」

「えっ!?」


 気配を察知していたレイは剣を再度構え、渾身の力を込め、


岩砕撃ボルケーン!」


 振り下ろした一撃が、牙とぶつかり合い周囲に衝撃波を生む。

 辺りの草木が引吹き跳びかねない程激しく揺れる。


「オウロ!」

「ああ!」


 レイがイノシシ型モンスターを押さえ込んだと同時に、横腹に回り込み鋭い拳を突き刺す。


「ヒガァ。」


 イノシシ型モンスター2体目も、その場に倒れ込み赤い魔石に変わる。

 イノシシ型の攻撃を正面から受け止めたレイの元へ、オウロは駆け付け


「大丈夫かい!レイ君!」

「ああ、この体は頑丈らしい、怪我もない。」


 イノシシ型モンスターの突進を真正面から受け止めたレイだが、確かに体に傷はない。


 その姿に、オウロは疑問を覚えた。


(そんなこと可能なのか?僕は攻撃が当たる前に、先に相手を攻撃して自分への衝撃を無くした。でも、レイ君は正面から全て受け止めて、その上でたたき伏せた。頑丈な体にも程があるだろ。)


 2つの魔石を手にした2人は、帰路に着く。


 そこで、レイからオウロに伝える。


「なんか、オウロと戦うのは、すごい楽で良い感じがする。」

「……、そうかい?手放したくないレベルかい?」

「いや、そこまでじゃない。だけど、あんたのその力は、俺では想像もできないほどの努力の先に手にしたものだろ?すごいと思うよ。」

「あ、ありがとう。」


 突然褒められたオウロは、一瞬狼狽え頬を赤らめる。

 そして、レイの戦いについて考えをまとめていたオウロは、レイに伝える。


「なあ、レイ君!このクエストを達成したら、僕の住む町、カラマタに来ないかい!!」

「え、オウロの町に?行って、何かあるのか、俺は金をほとんど持っていないぞ。」

「いいのさ!正当な報酬を得られれば、問題なく過ごせるよ!それに、君についてもっと知りたいんだ!」

「……まあ、行くところがあるわけじゃない、住むかは置いておいて連れてってくれるか?」

「ああ、喜んで!」


 レイはひょんなことからペレの村からカラマタの町に向かうことになった。


 そこで、彼を待ち受けるものとは。

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