第234話 ワノモトの事件
リンとアンジェは町を進み、周りの人の観察をしながら町長が住んでいる家を見つけていく。
「ここに戦士がいる気配がないな、いくら襲撃があったからといって1人も残らないのはおかしいよな。」
「そうですね、たとえこの町の戦士がやられてしまったとしても近くの町から応援を出すのが普通です。でも、そんな余裕もないほどに被害を受けている可能性も。」
「くそっ、戻ってこれたはいいけどすぐに師範のところに行くのは難しいか。時間がないってのに!」
「焦ってはいけませんよ、兄さん。必ずここで成果は得られるはずです。」
町を進んでいると、他の建物より高い建物が目に映る。
「あの高い建物、町長がいそうじゃないか?」
「あり得そうですね、行ってみましょう。」
建物に向かいながら、
「兄さん、町長に話す時はウラノスの名前を出しますか?それとも、通りすがりを装いますか?」
「俺たちの名前を出した方がいいと思う、ムクナ師範は生きていることがわかった、俺たちの名前を知ってる人ならより詳しく教えてくれるはずだ。」
「分かりました、話は合わせますね。」
数分歩くと、リンとアンジェは高い建物に辿り着いた。
「中から人の気配がするな、正面から行くぞ。」
「はい。」
リンがドアをノックすると、
「はい、どちら様で?」
「初めまして、ウラノスと言います。この辺りの状況を教えてもらいたいのですが。」
「女の声のウラノス?もしや、男もいるか?」
「ああ、俺はリン・ウラノス、さっきのが妹のアンジェ・ウラノスだ。」
「……信じ難いが、ここで拒んでも意味がないですね。中にお入りください。」
リンとアンジェは案内に沿って、建物の中に入る。
中は、一人暮らし用に家具が配置されており襖や障子など、和服な造りであった。
「なんか、懐かしいな、この雰囲気。数ヶ月しか離れていなかったはずなのに。」
「この雰囲気を懐かしいと申されると言うことは、本当にご本人なんですね。ウラノス様、ベゴニア様の教えを会得した唯一の存在。」
1人の男の老人が歩いてくる。
「改めまして、お時間頂きありがとうございます。訳あって、あちらはこの辺りの状況を理解できていなく、分かる範囲で教えて頂けませんでしょうか?」
「畏まりました、私の知ることをお話しします。」
「ありがとうございます。」
町長の話では、予想していなかった多くのことを聞けた。
1つ目は、ワノモト全体が多くのモンスターに襲われていること。
種類は統一され、狼の姿をしたモンスター。
この町も襲撃を受け、多くの人が帰らぬ人となった。
初めは、ワノモトの戦士がオオカミ型をなんとか倒していった。
しかし、襲いくるオオカミ型の数が多く負傷した戦士が回復するよりも先に町を襲い続けてきた。
その為、今も残っている町は3割程度になってしまった。
オオカミ型の目的は、町を占領するわけではない、その町に住む人たちを片っ端から倒し、破壊したら次の町に侵攻していった。
もう1つは、流派を受け継ぐための道場として機能しているのは、1つしか残っていない。
「2人の先生が残している流派、ムクナ・ベゴニア様のところ以外はもう存在していないと噂になっている。実際、うちの町も道場が潰され、先生も殺されてしまった。」
「……あいつら、何が狙いなんだ。ムクナ師範はどこにいるか分かるか?」
「今までと同じ場所にいられるのなら、城の近くに設立された対化物作戦室にいるはずだ。ここから、徒歩なら2時間はかかると思うが。」
「ムクナ師範の状況はご存知ですか?」
「聞いた噂程度のものだが、ワノモトの城に多くのモンスターが襲撃してきてその際に重傷を負ったと聞いた。」
なるべく冷静に話を聞いていたリンとアンジェだったが、ムクナの話を聞いて焦りが浮かんだ。
「そうか、ありがとう。俺たちは、ワノモトを救うためにここにきたんだ、まずはムクナ師範と合流してみるよ。」
「ありがとうございます、戦える方が増えるのはとても嬉しいです。ただ、この辺りを襲ってきたモンスターもかなり強敵でした、気をつけてお向かいください。」
「ええ、情報頂けて少し整理できました。また伺うと思いますので、なんとか耐えてください。」
「微力を尽くします、どうかご無事で。」
2人は外に出て、セラとオウロの元に向かっていく。
「兄さん、ムクナ師範は。」
「多分、ほとんど1人で多くのモンスターを倒してきたんだろうよ。早く合流して、最悪の事態を避けないとな。」
「うちらが向かうのはいいですが、セラさんたちを連れていった場合騒動になる可能性も……。」
「そこはリーダーの俺の出番だろ?ムクナ師範は俺ら以上に戦いにも、戦場にも慣れている。信じて向かおう。」
リンとアンジェはセラ達と合流する。
「どうだった、2人とも?」
「ああ、城の方角はわかった。後は、時間との勝負だ。行こう!」
「ええ、リンとアンジェの師範にぜひお会いしたいからね。」
「ただ警戒も怠ってはいけないね、モンスターが多いのなら道中襲われる可能性も高い。」
「そうだな、各員警戒しつつ城に向かう、作戦開始だ!」
「了解!」
リン達は、ムクナが待つ城に向かって走り出した。
はたして、ムクナの状況はいったい……。
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