第233話 小さな町にて

 ワノモトの戦士達は、セラとオウロに武器を向ける。

 その手は震えながらも、確実に殺意がこもっていた。


 動ける戦士は10名ほど。

 ここにいる支援課ダーヴが力を振るえば、実力で黙らせることもできる。


 しかし、それはリンたちが求める解決方法ではない。


「辞めてくれ!俺たちはあんたたちと敵じゃない、ワノモトに救援に来たんだ!ムクナ師範と会わせてくれ!」

「外者といるウラノスの2人を会わせるわけにいかない!今あの人を失えば、ワノモトは終わりだ!」

「だからこそ、危険なワノモトを助けたいんです!これがうちらの総意です!」

「黙れ!もう、甘言に乗るつもりはないぞ!」


 リンたちの説得に全く耳を貸さない戦士たち。


 彼らを支配してるのは、自分たちが死ぬ、そして、ワノモトがなくなってしまうという恐怖。

 恐怖によって、冷静に思考することができなくなってしまっている。


(ダメだ、これ以上話してもいつ襲われるか分からない。俺たちもこの2人に傷を負わせるわけにいかない。とはいえ、俺が1人で行くのも……。)


 リンは自分だけ戦士達に投降するという設定で、ムクナの元に向かうことを考える。


 その考えを読んでいたかのように、セラがそっと裾を掴み、


「セラ……。」

「ダメよ、あなただけ危険な目にあいかねない。」

「……分かった。」


 リンは戦士達に向け、


「俺は、ムクナ・ベゴニア師範から十華一刀流トウカイットウリュウの教えを受け、全てを納めたリン・ウラノスだ。俺たちがここに来たのは、身喰らう旅団の手から、ワノモトとイリオスを救うためだ!今は退くが、必ず師範に会いに行く、それだけ伝えてくれ。」


 そう言い残し、リン達はその場から走り出す。


「なっ!逃げるぞ!追いかけろ!」

「……いや、待て。俺たちも傷を負っている者ばかりだ、深追いして命を散らしては意味がない。城まで撤退しよう。」

「ですが!」

「これは命令だ!今回の作戦で、同志が7人散った。我らも総勢100人を切っている、余計な死者を出すわけにいかない。」

「くっ、了解。」


 戦士達もリン達とは逆に歩き出し、その場から離れる。

 ワノモトの戦力も、底をつきかけていた。




 リンたちはその場から逃げ出し、近くの林に隠れていた。


「すまない、皆んな。俺があの戦士達を、説得できなかった。」

「リンくんのせいではないよ、彼らの言い分も分かる。これ以上ワノモトを傷つけたくないから、他者を近寄らせない。それも、ある意味正解だと思うから。」

「でも、これじゃあワノモトに来た意味がありません、兄さん、どうやって城に近づきましょうか。」

「そうだな、まずここがどこか確認しないと、目的の城にまで行けないな。通りに出て、商人を待つか、あるいは村や町を見つけるか。」


 アンジェは過去の記憶を探り、近くの町について思い出す。


「兄さん、昔と変わっていなければここから15分ほど歩いたところに小さな町があったはずです。そこまで行ってみませんか?」

「そうだな、ここで立ち止まってても意味がない、少しでも情報を得るためにも行ってみるか。セラ、オウロ、もし町が2人を受け入れなさそうだったら、俺とアンジェで情報収集しようと思う。」

「了解よ、無茶だけしなければ私たちから言うことはないわ。」


 支援課ダーヴは、アンジェを先頭に近くの町に向かって歩き始める。


「リン、さっきの人たちとの会話で大切なことが一つわかったわね。」

「ムクナ師範のことか?」

「そうよ、あの人たちが最後の希望のように呼んでいたわ。つまり、まだあなたの師範は生きている。」

「ああ、ムクナ師範と合流して少しでも早く話をしたい。どうするか作戦会議もしないとだな。」


 そのまま支援課ダーヴは、アンジェの予想通り小さな町に辿り着いた。


「すごいなアンジェ、本当に町があったぞ。」

「うちの記憶力、舐めてもらっては困りますよ!行きましょう、まずはうちら2人でいいですよね?」

「ええ、お願い。私とオウロは辺りを警戒しながら、これからの動きを考えておくわ。」

「ありがとう、何かわかったらすぐ戻る、待っててくれ。」


 リンとアンジェは町に入り、人々の様子を見て回る。


 その町に活気はなく、商いをしている人たちはいるが、怖さすら感じてしまう暗い雰囲気。


(この辺りの人たちも、さっきのモンスターとかに襲われたのかもな。建物が傷だらけだし、人に活気がない。)

(情報を得るには話を聞きたいところですが、下手に刺激をしすぎてもいけない。向かうのは、この町の町長がいる施設からでしょうか。)


 リンとアンジェは向き合い、


「考えは同じみたいだな、この町の町長の家に向かってみるか。まだ話をできる状態の人かもしれない。」

「そうですね、道場があれば尚のこといいのですが迅速に調べましょう。」

「ムクナ師範の道場はなくても、他の道場はあってもおかしくないからな。」


 リンとアンジェは町長が住んでいそうな建物に進みつつ、他に情報を得られる場所がないか見渡しながら進んでいった。


 はたして、この町で情報を得られることはできるのだろうか?

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