第173話 最後の戦い

 リンの頭を痛みが襲い、次目を開けたときに見えた光景は、


「っ!?ここって、別世界に飛ばされたときに見えてた広場か?……急すぎるだろ、なんでいきなりワノモトの地に俺が立ってる?」

「やっと来たか、レプリカ。」


 辺り一面草原であり、真ん中に噴水が設置されている場所の奥に、例の彼はいた。


「やっぱり、ここはそういう世界だよな、黒い俺。」

「そうだ、ここはお前が何度も足を踏み入れてるもう1つの世界だ。そして、この場所に記憶はあるか?」

「あるに決まってる、お前と戦うたびに流れ込んでくる記憶の中にあった、ここはムクナ師範と十華一刀流トウカイットウリュウを継承するために毎日のように通った場所だ。いわゆる、思い出の地ってやつだな。」

「そこまで思い出せているなら、お前はもうすぐ元通りの自分になれるな。だが、そう簡単にゴールはできない。」


 黒いリンの手には、先ほどリンが手にしたばかりの、ロトスが握られていた。


 ロトスは、同じくリンの手にもある。


「レプリカ、今回お前が俺に勝てれば、十華一刀流トウカイットウリュウを全て思い出せるだろう。ただ、そう甘いもんじゃない、俺もお前も全力でぶつかることになる、つまり、今回でどちらかが消えるってことだ。」

「っ!?なんでだよ、お前は俺の一部なんじゃないのか!お前は、黒い俺は、いつも俺のピンチを予測してたかのように出てきてくれた、俺を助けてくれてた、なのになんでどっちかが消える必要があるんだ!」

「……構えろ、レプリカ。俺たちの会話には、言葉はいらない。この刀が、伝えてくれる。いくぞ、千変万華センペンバンカ!」


 黒いリンの周りに、人を気絶させられるほどの覇気が纏われ、リンの髪を大きく揺らせた。


「これが、レプリカと俺の最後の戦いだ、一瞬の油断が、余計な感情が、自分の命を無くすと思え。」

「……話し合いでどうにかなるとは思ってなかったけど、現実は非情だな。俺はまだ、お前と戦う理由が見つけられない。でも、やるしかないんだな。」


 リンはロトスを構え、黒いリンも同じ構えを取る。


十華一刀流トウカイットウリュウを真に継承しているものしか、ここから生きて帰れない。始めるぞ、レプリカ!」

「くっ、やってやるよ!」


 2人の髪を揺らす風が止んだ。


 次の瞬間、


「一の型、華火ハナビ!」

 黒いリンが抜刀と共に斬り上げれば、


「一の型、往華火オウハナビ。」

 リンは鋭く振り下ろし、激しく火花を散らす。


(ロトス、カグヤが作ってくれた俺専用の武器、確かにこれまでの黒剣を有に超える扱いやすさだ。黒剣もしっくりきてたつもりだったけど、俺専用になるとここまで進化するのか。)

「余計な思考をしてる暇はねえぞ!レプリカ!二の型、桜羅吹雪サクラフブキ!」


 黒いリンは、桜の花が舞い落ちるように不規則な攻撃を繰り返す。

 なんとか反応して捌いていくリンは、


「三の型、カイ向日葵ヒマワリ。」


 回転斬りを放ち、黒いリンを押し返す。


 そして、全く同じタイミングで、

の型、月華乃凪ゲッカノカゼ。」


 2人の白い大きな斬撃が、2人の間でぶつかり合い衝撃波が2人の服を揺らす。


「レプリカ!お前も使ってみせろよ、この力を、千変万華センペンバンカを!じゃねえと、俺に殺されるだけだぞ!」

「お前がこの前から使ってる力か、大方自分の力の限界をさらに引き上げる技なんだろうな。でもお生憎様、まだ俺はその力を思い出せてないんだよ。」

「思い出すどうこうじゃねえ、体の内側から湧いてくるだろ、勝つために力を欲するなら!」


 黒いリンは瞬間的にリンに接近し、ロトスで突き刺そうとする。


「終わりだな、レプリカ─。」

「いいや、終わらねえよ。俺の力は、まだここにある!十華一刀流トウカイットウリュウトオの型、開演。」

「っ!?」


 黒いリンは危険を察知し、すぐさま距離を取るが、


「そこは、俺の庭だ。ソメ、立てば芍薬。」


 黒いリンに対し、リンは自分しか視界に入れさせないほどのプレッシャーを与える。

 そのまま、流れに乗って居合斬りを放ち、火花を散らす。


 背後に立ったリンは、黒いリンが振り返る前に、


ナカ、座れば牡丹。」


 分身が2人現れ、3人が白い大きな斬撃を放つ。


「ちっ!」


 体に掠めながらも、黒いリンはなんとか捌き切る。

 すると、視界からリンは消えており、


シメ、歩く姿は百合の花。」


 3人が1人に戻ると同時に、刀を鞘に収めると黒いリンの腹に傷が生まれる。


 そう、リンは十華一刀流トウカイットウリュウの最後の型を思い出すや否や、使いこなしたのだ。


「レプリカ、お前、もう思い出してたのか。」

「お前のおかげでな、俺は改めて気付かされた。俺の環境を、今皆と過ごせてることの、を。」

「はっ、最後の感傷にたどり着いたか、レプリカ。まあいい、それはただの第一関門にすぎねえ、本当の意味で自分を取り戻すには、俺を殺してみせろ!レプリカ!」


 黒いリンが激しい声で叫ぶと共に、誰が想像できたか。

 体にできた傷が、いつの間にか消えていた。


「っ!?体の傷が─。」

「さあ、本番はここからだぞレプリカ!その刀で、俺を止めてみせろ、お前に勝つつもりがあるならな!」

「くっ、本当に厄介だな、お前は!」


 リンは、幸福を思い出し、十華一刀流トウカイットウリュウトオの型まで思い出した。


 しかし、2人の戦いは終わりはしなかった。

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