第171話 戦いの基礎

「シャァァ!」


 大型蝙蝠型モンスターは、リンとセラ目掛け高速で迫る。


「一の型、華火ハナビ。」


 抜刀と共に斬り上げたリンの一撃が、蝙蝠型の牙と火花を散らす。


 空から加速した攻撃である分、地の利は蝙蝠型にある。

 しかし、リンの鋭く鍛えられた五感は、相手の地の利を覆すほどに作用していた。


(蝙蝠型の殺気、向かおうとする方向、その音、匂い、鉱石しかないこの空間だからこそ俺の五感にもよく反応する。後は、どっちが先に一撃入れられるかだ。)

「シャァ!」


 続けて蝙蝠型は、空高く飛び上がり1回転して翼を振り抜く。


「三の型、カイ向日葵ヒマワリ。」


 鋭い回転斬りで応戦するリンのところへ、


「当たりなさい!」


 セラが銃剣から弾丸を放ち、体に直撃させる。


「キシャ!?」

「直撃しても大きなダメージではないってか、確かに頑丈そうな皮膚をしてるもんな。なら、これで!の型、月華乃凪ゲッカノカゼ。」


 リンは生み出された一瞬の隙を逃さず、振り抜いた白い斬撃で翼を狙う。


 だが、驚異的な反射で口から波動のようなものを放ち蝙蝠型は身を守る。


「こいつ、かなり頭がキレるな。セラ、ここでできるか分からないけど、準備はいいか?」

「まさか、またあれをやるつもりなの!?」

「ああ、俺とアンジェの同調シンクロを模倣した戦い方、共鳴リンクを試すぞ。それほどに、こいつは強い。」


 同調シンクロは、リンとアンジェのみ使えるお互いの思考を瞬時に理解し合い戦いに反映させる反射で常に動く戦略。


 それに対し、リンとセラが生み出した戦い方、共鳴リンクは相手の思考を予測し合い、いつ、誰が、何を、どのようにして行動を起こすか常に思考し続け、数秒先の結果を合致させる戦い方。


「だけど、この狭い空間と相手の戦闘パターンと知識がない場面では私たちの思考じゃ補いきれないわ。」

「いいや、俺たちなら出来る、俺たちだから出来る。セラ、俺のことだけを考えてくれ、俺もセラのことしか考えないから。そして、その思考の先に勝利があると信じてる。」

「……はぁ、ただでさえまだ扱いきれない技よ、1分以内に終わらせるわ、でないと脳が1つではもたない。」

「了解だ、いくぞセラ!」


 リンは走り出すと同時に、背中から銃剣の弾丸が放たれた。


 1発リンの隣を突き進み、蝙蝠型の右翼を直撃する。

 しかし、大きな穴は生まれずダメージは少ないのが見て取れる。


(リン、なんで私が翼を狙っているのか、そのくらいあなたなら分かるわよね。)

(翼を狙ってる……なるほどな、俺たちは2次元の戦いをさせられるのに対して、蝙蝠型は3次元の戦い方をしている。なら、翼を切り落とせば俺たちの領域に連れて来れる!)


 セラの戦い方を理解したリンは、まず顔に向け黒剣を構える。


「シャァァ!」


 蝙蝠型は口から波動を放ち、リンを狙う。

 その攻撃は、リンの予測通り。


 蝙蝠型が狙ったリンはその場から姿を消し、


「六の型、白太刀シロノタチ鏡華水月キョツカスイゲツ。それは残像だ。」


 リンは顔を狙う動きをしていたが、本当の狙いは右翼であった。


 振り下ろされた一撃は、翼を数センチ切り落とすと同時に右翼にひびを入れた。


 痛みを覚えた蝙蝠型は空に逃げようとする。


 しかし、


 翼が傷を負ったことにより、飛び立つまでに時間がかかった。


 そこへ、


「照らせ、ルビー。」


 銃剣に魔術を発動し、赤く光らせ熱を持たせる。

 セラは逃げようとする蝙蝠型に急接近し、鋭い一撃を右翼に振り下ろす。


 熱を帯びた一撃は今の空間の中で1番眩しいものであった。


「鉱山に生息してるモンスターなら、光は苦手じゃないかしら?」

「シャァァ!?」


 蝙蝠型は光に驚いたのだろう、動きが鈍くなる。

 それでも、口から波動を四方八方に放ち最後の抵抗を見せる。


(このままじゃ、極鋼レアクロムを取る前にこの場所が岩で塞がれる。その前に止めないとな!セラ!)

「照らせ、アメジスト。」


 銃剣から紫色の光を放ち、飛べなくなった蝙蝠型がセラに引き寄せられる。


「シャァァ!」

「後は任せるわよ、リン!」

「おう!」


 引き寄せられる動線に、黒剣を構えるリンの姿が。


「シャア!?」

「悪いな、蝙蝠型のモンスター。お前は相当強い、でも、鉱山の外には、お前が知らない外の世界には、もっと強い奴がいるを忘れるなよ。シチの型、黒太刀クロノタチ落葉ラクヨウ。」


 引き寄せられる蝙蝠型に対し、リンは自身の分身を2体生み出し、3人で居合斬りを放つ。


 顔から斬り裂かれ、蝙蝠型は地面に倒れ魔石に変わる。


 その戦闘時間、実に20秒。


 驚異的な連携が、蝙蝠型モンスターを圧倒した。


「ふぅ、なんとかなったな、セラ。」

「ええ、普通のモンスターで良かったと安心するのはおかしいかもしれないけど、良かったわ。ねえ、今の戦闘で気が付いたのだけど。」

「どうした?」


 セラはリンの元へ寄る。


 そして、


「私たちの戦い方、共鳴リンクは自身が習得した技の延長線にあるわよね?」

「ん?まあ、確かにそうなるな。」

「だとしたら、自分だけじゃない、仲間の技をより知ることができれば皆が共通して使うことができるんじゃないかしら?」

「相互理解ってことか。確かに、まずは技のことを知って、その次に相手のことを理解することができたらいけるかもな。戻ったら話してみるか。」

「そうしましょう、まずは採掘からね。」


 今回の作戦で、リン達はさらに強くなるきっかけを掴んだ気がした。

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