第116話 潜入作戦

 リンとアンジェは、アテナの王城近くまで辿り着く。

 そこでは、さらに異様な雰囲気を感じ取っていた。


「アンジェ、テロが起きてるとしたら、王城の守りをここまで厳重にしている余裕はないよな?」

「うちもそう思います、テロを鎮圧するためにその原因を追求する騎士団が送られるはず、城にここまで戦力を割く余裕はないはず。」

「だとしたら、広場の方から聞こえてきた言葉と、アテネの現状が気になるな。テロでないとしても、ここまで破壊する理由が分からない。」

「どこからか中に入りましょう、これほどの大きな建物です、穴はあります。」


 リンとアンジェは茂みに隠れながらさらに潜入する方法を探る。


 その途中、警備してる騎士団のぼやきが聞こえる。


「なあ、本当に処刑するのか?あんないい女、ただ殺すだけじゃ勿体無い、もっと遊んでからにしないと。」

「そんなこと言ってる場合じゃねえだろ、いつ外部から騎士団が戻ってくるか分からねえんだ、15時までに終わらせないと作戦が水の泡だ。」

「でもよ、少しくらい遊んでも─。」


 2人の騎士団目掛け、迫る影が2つ。


「っ!?こいつらどこから─。」

「交代の時間だ、クソ野郎。」

「ゆっくりお休みください。」


 リンとアンジェが騎士団2人に迫り、1人は顎に拳を受け気を失い、もう1人は背負い投げされその場にダウンする。


 そのまま動けなくなった騎士団2人を茂みに隠し、リンとアンジェは近くの窓に近づく。


「兄さん、この人たちってまさか。」

「ああ、本物の騎士団じゃないな。多分、雇われの傭兵か最悪は身喰らう旅団の一味か。ただ、騎士団かそこに近い奴が潜んでるのも間違いないな、完全に騎士団がアテネを留守にするタイミングを知ってた。」

「そうですね、これでは15時というのも嘘かもしれません。急ぎましょう、この窓から中に入って。」

「ああ、器物破損になるけど、許してくれよ、セラ。」


 リンは拳に布を巻き、窓を割り鍵を開けて中に入る。


 城の中は静寂が包んでいた。


「なるほど、外の警備を厚くしてるから内側は脆いって感じか。」

「油断はしないでください、うちらでも気配を感じられない存在がいるかもしれませんから。」

「ああ、まずはセラがいそうな場所を見つけないとな。定番は、牢屋か。」


 2人は足音を立てずに中を進み、リンは匂いと音に集中しセラの位置を探る。

 アンジェは目を使い、隠れてる者がいないか、迫る敵はいないか警戒する。


 数分城を探索すると、リンはとある手がかりを得る。


「この香り、セラのものだ。……城の外から?」

「城にいる保証はありませんから、一度行ってみてもいいかもしれませんね。」

「そうだな、そこの扉から外に出るぞ。」


 そっとドアを開け、リンとアンジェは別の建物に向かう。


 その建物は、


「ウォーカー家って書いてあるな、知ってるか?」

「いえ、流石にイリオスの王族に近い方の名前までは覚えてません。ただ、セレジアさんはレア家の方ですから、繋がりが見えませんね。」

「ひとまず人の気配はない、入るぞ。」


 2人はいつでも抜剣できるように構え、建物の中に入る。



 やはり、中にセラの姿はなく誰もいなかった。


「うちも感じます、ここにはセレジアさんの匂いが残ってますね。セレジアさんが通うほど仲が良い方のお家なのでしょうか。」

「レムみたいに仲がいい人はいてもおかしくないからな、少し気にしすぎたかもな。」

「……いえ、兄さんの勘は当たってたみたいです。ここ、見てください、カーペットに何か擦り付けたような傷があります、何かあったのは違いありませんね。」

「でも、セラが人に触れるなんて……アンジェ、これ。」


 リンは近くのデスクに置かれた、数枚の紙を手に取る。


 そこに書かれていたのは、



 1人も逃がさない、悪を捕らえる。

 地獄はもうたくさんだ。

 半人前の騎士はいらない。

 真の騎士団を作る。

 計画にミスは許されない、今こそ立ち上がれ。



「兄さん、宣言書でしょうか、騎士団を1から作るといった。」

「……いいや、違うみたいだ。嫌な予感はよく当たるな、本当に。」


 リンは並べられた5つの分の頭を指さす。


「いち、じ、はん、し、けい。1時半死刑、兄さんこれって。」

「15時に処断するのはセラじゃない、騎士団そのものなのかもな。セラが処刑されるのは、13時30分、あと17分後だ。」

「そんな、だったら急いで探さないと!!」

「……なあ、アンジェ。俺が、お前がもしセラだとしたら、いつ動く?」


 リンは真っ直ぐアンジェを見つめる。


「え、そんなの今すぐ……いや、そういうことですか。ただ、場所がどこか分かりません、そこを見つけ出さないと。」

「1箇所、目星はついてる。もし違かったら、アテネをさらに壊すことになってでも、全力でセラを助ける、アンジェ、俺に賭けてくれないか?」

「……分かりました、兄さんの戦いにおける勘とその場で立てた作戦はよく成功しましたからね、今回も信じてみます、うちを導いてください。」

「了解、まずは城の中に戻って身を潜められるところを探そう。」


 リンは何か作戦を思いつき、アンジェは詳しく聞かずリンに従う。


 はたして、リンが目星をつけている場所とは、そしてセラの処刑を止めることはできるのか。

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