第115話 情報収集
リンとアンジェはアテネの門まで辿り着き、馬を降りる。
馬は近くの草原に待機させ、2人はこれまでに感じたことのない異様な雰囲気のアテナを感じる。
「ここって、本当にアテネだよな。活気がないのは当たり前だけど、この体に纏わりつくような嫌な感じはなんだ。」
「もしかしたら、兄さんは殊更に感情に反応しやすい体質なのが影響してるのかもしれません。おそらく、ここにいる方々の怒り、憎しみ、悲しみ、その他複数の感情が混ざり合ってるんじゃないでしょうか。」
「これじゃあ、アテネをイリオスでみんなが目指す理想郷なんて口が裂けても言えないな。アンジェ、情報収集から始めよう、あと、俺の五感がセラに反応したらすぐに知らせる。」
「分かりました、行きましょう。」
2人は警戒態勢でアテネに入る。
いつ襲撃されてもおかしくない雰囲気を2人は感じていた。
理由は簡単、
アテナの商店街やギルド、他複数の建物が半壊しており機能していない。
レムの以前の職場、ホームも看板が壊され椅子やテーブルが外に投げ出されている。
さらに疑問に感じることは、
人の声がしないこと。
どれだけ巧みなテロリストだとしても、アテネに住む人間全ての口を塞ぐのは不可能。
王都には数万人が暮らしているのだから。
リン、アンジェは辺りを見渡しつつ、人の気配がする方にゆっくりと進んでいった。
「ここまで人がいない、そしてどこかの建物に避難している様子もない、ならこれほど多い人たちをどこに集める?」
「王都アテネには、王族の方々が会見などで使われる大きな広場があると聞いたことがあります。兄さん、ご存じないですか?」
「王族の、会見……。王女の生誕祭をお祝いした会場なら、可能性があるか。ただ、そこでも全ての人を集めるのは難しい、それに万を超える人をまとめるのは……まさか、身喰らう旅団が絡んでたりしないよな。」
「うちもその可能性を考えました。テロを起こせるのは何も人だけではない、人を中心とした集団なら可能です。二足歩行オオカミ型やモンスターを操って。」
さらに先に進み、リンはとある音に反応する。
「アンジェ、ストップ。」
「何か聞こえましたか?」
「ああ、とびっきり嫌な音がな。どうやら、処刑の時間を公表してるみたいだ、近くの路地に隠れて聞いてみる、付き合ってくれ。」
「はい。」
リンとアンジェは、近くの路地に入り込みリンが聞き耳を立てる。
(距離は、ここから1km弱。アンジェの言う通り、あの広場が中心みたいだ、ただセラの匂いがしない、まだそこにいないみたいだな。あとは、話してる奴の言葉を聞き取れれば。)
リンはその耳で聞き取った情報を、そのままアンジェに伝わるよう口に出す。
「アテネを滅ぼそうとした、元凶、セレジア・ウィル・レア、騎士団の誇りを胸に、この地にて処断する。時刻は、15時。同胞よ、皆でアテネに平和を。」
(兄さんが同時通訳のようにうちに伝えてくれてる。ただ、これじゃあ騎士団が主体で動いてるみたい、テロそのものが嘘なの?)
「過去の騎士団に属した者も、欲に目が眩み、過ちを犯した。その因果を、断ち切るのは今の騎士団、我々だ。」
(え、それはおかしい。レムさんは確かに、誰かの罪を被って騎士団を辞めてるって聞いたけど、マクセルさんは自分の意思で、カラマタの第二の被害を生み出さないために除隊したはず。いくら過去のこととはいえ、10年前のことを間違える?)
リンはそっとアンジェに指を動かし、路地の奥に進むことを提案する。
そのまま2人が先に進み、曲がり角を曲がると、
「ちっ、こっちに怪しい動きをしてる奴らがいた気がしたんだけどな。」
「気のせいじゃないのか?この路地にも誰もいない、考えすぎだよ。」
「そうだったらいいんだけどよ。」
2人の男の声が聞こえ、リン達が入った路地を過ぎていく。
「ふぅ、相手側にも戦いに特化した奴らがいるみたいだな。にしても、さっきの演説は違和感だらけだな。」
「はい、騎士団がわざわざ国民の前で間違いを話すわけがない。信頼を失いかねないから。ただ、間違いを話す可能性があるとすれば。」
「ああ、騎士団じゃない奴が紛れてるのかもな。ただ、セラを処刑する時刻は間違いじゃない気がする、それまでに助け出すぞ。」
「もちろんです、どこから行きますか?」
「可能性が高いのは、城だろうな。あそこなら、外部からの干渉を遮断することができる、まずは潜入するところからだな。」
そうして、リンとアンジェはアテネの王都に向かい人が通らないような狭い路地をうまく使い進んでいく。
演説によれば、セラが処刑されるのは15時。
つまり、あと2時間でセラが外に連れ出されるか、処刑場に連れて行かれる。
それまでに助けられなければ、全てが終わり。
なんとしてでも助けるべく、リン、アンジェはさらに警戒を強め、セラにつながる手がかりを見逃さないよう城へと向かった。
そして、2人の目には厳重な警備が敷かれている城の姿が映ってきた。
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