第101話 2度目のスタンピード

 リン、セラ、オウロ、ルビアはシオンに向かう途中行商人が旅人と話しているところに遭遇した。


「行商人か……何か商いをしている様子ではないね。」

「オウロの言う通りだ、何かあったみたいだ。話を聞いてみよう。」

「そうね、この辺りが静かすぎるのも疑問だわ。何か知っているかもしれないわね。」


 4人は行商人達の元に向かう。


「おおっ!旅のお方!それにそのお姿は、戦士の方ですね!」


 大きな馬車を引く男の子行商人がリン達に声をかける。


「ああ、何かあったのか?すごい慌ててる様子に見えるけど。」

「はい、この近くでスタンピードが起きたんです!なので、私が向かっていた方角を変え巻き込まれないように走って逃げてきたんです。」

「スタンピード?どこの町がターゲットにされているか分かるかしら?」

「それが、あまり大きな町ではないんだ。最近スタンピードで破壊された、名前すらもない町だよ。なんでまた発生したんだか。」


 彼の言葉が、リンの頭に嫌な直感を呼び起こす。


「なあ、そのスタンピードってここから15分くらいのところにある村じゃないか?」

「ん?あぁ、確かその辺りだよ。これまでのスタンピードと違って、豊かな町を狙うわけじゃない特例だけど─。」


 リンとセラは瞬間的に理解した。




 ターゲットは、


「オウロ!ルビアを頼む!」

「え、まさかスタンピードの狙いって。」

「シオンの可能性が濃厚だわ、私とリンが先に行くから、後から追いかけてきてちょうだい。ルビアを危険に晒したくないから。」

「わ、分かりました。2人とも、気をつけて。」

「ああ、ありがとう。」


 礼を言うとともに、リンとセラは風を置いて来るほどのスピードで走り出す。



 その姿を、オウロとルビアは見つめていた。


 ルビアも異変を感じたのだろう、ペンで紙に文字を書く。


「大丈夫かな?……そうだね、2人がいてくれれば大丈夫だよ。でも、もしもの可能性もある、僕らも少し近づいておこうか。」

「……。」


 ルビアは強く頷き、オウロと共に歩いて向かった。





 同時刻、シオンでは、



初式ショシキ水切りミズキリ。」

「フゴォ!」


 イノシシ型モンスターが、レムの素早い一撃で倒され魔石に変わる。


「姉さん!」

「ええ!」


 続けて、2人の戦士が蜂型モンスターを細剣で突き刺す。


 カラマタのサポーター、エリとリーナだ。


「あたし達の村に、土足で入るのは許さないよ!」


 大きな黒いハンマーがゴリラ型モンスターを倒す。

 その扱い手は、カグヤだ。


「マクセルさんのお気に入りの村だ、俺たちで守り切るぞ!」

「おおっ!」


 カラマタから立ち寄っていた3人の戦士も戦闘に参加する。


 スタンピードは、数十体から、100体近くのモンスターが押し寄せる危険な行動。



 それを、上位騎士のレムを中心に、カグヤ、エリ、リーナ、男の戦士3人で対処しようとしていた。


「皆さん、前には出過ぎずに守る陣形を崩さないでください!カラマタに応援を依頼しました、もう少しの辛抱です!」

「とはいえ、なんでシオンがこんな頻度で狙われるんだろうね、何がここにあるって言うんだい。」

「分かりませんが、ここはリンさん、レア様、オウロさんの帰る場所です。何としてでもお守りしなくては。負傷した方は、無理せず下がってください!」


 上位騎士のレムの指示は的確で、自分を主軸にモンスターを確実に減らしていった。




 しかし、


「うぐっ、くそっ。」

「カグヤさん!」


 数十回巨大なハンマーを振り回したカグヤの体に限界が来ていた。


 それもそのはず、小型モンスターを含めるレムの次に活躍していたのだ、戦士でもない彼女が。


 その隙を見逃さなかった蜂型モンスターが、カグヤに迫る。


「行かせません─。」

「ブォ!」


 イノシシ型モンスターがレムの進路を塞ぎ、牙と短剣が鍔迫り合う。


「くっ、邪魔をしないで!」


 レムの目には、蜂型モンスターの針がカグヤの心臓目掛け迫る姿が映る。


(くっ、またあたしは大切なものを守れないの。……いや、この距離なら右手でイノシシ型の攻撃を受け止めれば、左手で間に合わせられる。もう、後悔する選択はしない!)


 カグヤに迫る蜂型モンスターに対し、レムはさらに力を強め短剣で目の前のイノシシ型モンスターの牙を弾こうとする。


「あたしの前で、誰かの命が散るくらいなら、腕の一本くらい!」


 レムが体を犠牲にして攻勢に出ようとした、その瞬間、




 蜂型モンスターの姿が一瞬にして消え、その場に魔石が落ちる。


後から風が発生し、カグヤの赤い髪を揺らす。


「っ!?君、何で。」

「そんな、その状態で戦うなんて無理です!」

「いいえ、無茶ではありますが、無理ではありません。うちにも、皆さんの帰る家を守らせてください。」



 そこに立っていたのは、全身に包帯を巻きながらも、水色のブーツに青のショートパンツ、白色のタートルネックに大きな赤いネックレスを身につけた、



 アンジェであった。


「アンジェ、君の怪我はまだ治っていない、傷が開いたら─。」

「それでも、皆さんが死んでいい理由にはなりません。うちの命を助けてくれた、これまでの罪を償える機会がもしもらえるなら、うちは今を選びます。」


 アンジェは短剣を2本構え、戦場に立った。


 大剣で切られた傷はまだ治癒していない、それでも彼女は自分を必要としてくれる人の為に戦うことを選んだ。

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