第100話 少女
リンとセラは二足歩行オオカミ型との戦闘を終え、奇襲を受けてから姿を隠しつつラミアの入り口へと向かっていた。
黒服からの襲撃に備え、オウロと合流し、身の安全の確保と情報の交換を優先したのだ。
「セラ、狙撃してきたやつはやっぱり見えないか?」
「ええ、あの1発以外私たちを狙っていないことから推測すると、あれは警告射撃だったのかもしれない。リンも殺気は感じ取れないの?」
「ああ、殺気も人の気配も感じ取れない。それに、狙撃する一瞬だけ本人の殺気を俺は感じ取れた、それまで隠してたとしたら相当の手慣れだぞ。」
「同意ね、まずはオウロと合流して私たちの安全を確保しましょう。もしかしたら、売買されてた少女のことも何か手に入れてるかもしれないわ。」
10分ほど走り、リンとセラはラミアの入り口近くまで辿り着く。
そこには、
「リンくん!セレジア様!」
右手を振るオウロの姿と、左手で1人の少女と手を繋いでいる光景が2人の目に映る。
少女は、セラとリンが近づくにつれ、オウロの背中に隠れる。
「オウロ、無事か?」
「うん、問題ないよ。リンくんのおかげで、最善の選択ができた気がする、ありがとう。それと。」
少女はオウロの背後に隠れ、顔だけゆっくり覗かせる。
「あなたは、金色服の男に買われた子よね?オウロ、彼女をどうやって?」
「金色服の男は黒服達と密会をしていたんだ。そこで、リンくんと合流した僕が彼女の救出に向かって、命を奪いかねない行動を見逃せなかったから、少し痛い目を見てもらってきた。ただ、彼女は。」
「何かあったのか?」
リンが少女を見つめると、ゆっくりと前に出てきて手に持つ紙とペンで何かを書く。
そして、
「言葉話せない……まさか、この子は。」
「セレジア様の予想通り、有名貴族のご令嬢でした。その資料も手に入れたのでシオンに戻ってからお話しします。そして、大きな苦しみを経験した彼女は、話すことができなくなってしまったようです。」
「でも、俺たちの言葉は聞こえているのか?」
「この子は、ルビアちゃんは聞くことはできるよ。僕らの声を聞いて、ルビアちゃんはしっかりと返答してくれるから。」
オウロの言葉に反応するように、小さく頷くルビア。
「聞く力を持っているのなら、話す力も持っていたはずだわ。それを拒絶するほどの過去、想像しただけで胸が苦しくなるわね。」
「ええ、僕はルビアちゃんもシオンに連れて行こうと思います。彼女はここにいてはもっと辛い生活を送ることになる、いいかな、リンくん?」
「当たり前だ、何も迷うことはねえよ。もし取り返しに来るようなら、しっかり話し合いをしよう、問答無用で襲撃してくるようなら受けて立つだけだ。」
「ありがとう、リンくん。」
ルビアもしっかりとお辞儀をして感謝を現す。
「改めて、初めまして、ルビア。私はセレジアよ。」
「俺はリン、よろしくな!」
リンが手を伸ばすと、ルビアは手を伸ばそうとするが少し迷いを見せる。
「あ、悪い、見知らない男がこんなことしたら怖いよな─。」
ブンッブンッと首を横に振り、ルビアはリンと優しく握手をした。
その手は少し暖かくも、少し冷たさを感じた。
まるで、ルビアの心を現すかのようにり
そしてリンには、一瞬ルビアが微笑んだようにも見えた。
「おおっ、よろしくな、ルビア。怖いことが起きたら、すぐに呼んでくれ、必ず助けに行くから。」
ルビアは頷き、4人はラミアの町を出る。
その道中、リンとセラは黒服達に襲われたことと二足歩行オオカミ型についてオウロと話し合った。
「人がオオカミ型に変化した?それが、何かを飲んだことをきっかけにってことかい?」
「ああ、俺たちが追ってたのは確かに黒服達3人だった。でも、実際に襲ってきたのはこれまで何度か戦ったオオカミ型だった。」
「それに、何かを口にして強風が体から吹いた途端に彼らの姿が変わっていたわ。力とスピードもそのタイミングで跳ね上がった様子だった、とても危険な存在。」
「人をモンスターに……そんなことが可能なのか?すみません、僕の方ではそのような資料は手に入れられませんでした。」
「もしかしたら、身喰らう旅団にしかない薬なのかもしれない。一度作戦を立て直して、またラミアに戻ろう。」
3人は情報交換しながら歩いてシオンに向かう。
リンと手を繋いで歩くルビアは、セラとも手を繋ごうとした。
だが、
「っ!?ルビア、ごめんなさい、私とは手を繋がない方がいいわ。」
手を引っ込めたセラに対し、ルビアは?を浮かべて首を傾げる。
「何か理由があるんですか?」
「そ、それは─。」
「さっきの戦いでセラは手のひらに怪我を負ったんだ。だから、もしルビアに触れて血がついたらいけないって思ったんだろ?口下手なセラ様?」
「……、ええ、そうなの。ごめんなさい、ルビア。それと、リンは後で凍り付けね。」
「理不尽だ!」
2人のやりとりを見て、ルビアも納得したのだろう、リンと手を繋ぎ直し歩き続ける。
そうして1時間が経過した時、前から向かってきた行商人が通行人ととある事件について話している場面に出くわした。
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