第90話 身喰らう旅団

 ギルドの奥の部屋に入るリンとセラ。

 そこには、手と足を縄で縛られ身動きが取れない状態で拘束される3人の黒服と、1人の大男が。


 リンとセラが入ってくると、黒服達は鋭い眼光で睨みつける。


「何だ、俺たちを処刑するのか?」

「そんな簡単に死なせるわけないでしょ、あなた達が死ぬとしたらこれまでのことを全部吐いた上で、独房で死を待つのよ。」

「おいおい、王都の姫がそんな怖いこと言っていいのか?俺らが外に漏らしたらメンツが潰れるぞ?」

「やってみろよ、その時は俺がお前達の口が開く前にこの手で縫い合わせてやる。」


 リンの威圧感により、黒服3人の動きが固まる。



 だが、大男は違かった。


「自分が生きる為に仲間を盾にしたお前が、そんなこと出来るのか?自分を見失って、死にかけた雑魚が─。」

「っ!」


 リンは大男の発言を聞き、無意識に鋭い拳を振るおうとした。



 その瞬間、


 セラがリンの前に立ち、大男に向け


「安心なさい、彼はイリオスの中で屈指の勇気も心の強さも持ってる戦士よ。あなたに心配されなくても、この経験を糧にして同じ過ちを繰り返さないわ。」

「へぇ、そりゃ見ものだ。アテネのお姫さんが言うんだ、相当なものなんだろ。」

「ええ、あなた達程度の拠点をこの人1人で壊してしまうくらいにはね。彼の真の強さの前では、あなたは瞬殺されてしまうわ。」

「さっきから聞いてれば、てめぇみたいな貴族が、舐めた口を聞くなよ!上の世界しか知らない能天気ボンボンが!」


 セラと大男の駆け引きに、リンも引かず割り込む。


「お前の言うボンボンって何だ?」

「あっ?簡単だよ、こいつみてえな世界の表面しか知らねぇで、あたかも世界を牛耳ってる気持ちになってるやつのことだよ!反吐が出るぜ!」

「そうか、ならお前はこの人のことをとても詳しいんだな。それに、世界の事も、お前の言うそれが事実なら、な。」

「てめぇも同じだ、軟弱な男!こんな国のおもちゃみたいな奴に飼われた可哀想な犬が─。」

「俺は、お前を哀れに思う。自分の予想でしかない、その目で確かめてない価値観を自分に、周りに植え付けて、分かり合おうとしないで争う、その姿を。」


 リンはそっと大男の肩に手を置き、目を見つめる。


「勘違いしすぎだぞ、お前はまだ世界の全てを知ったわけじゃない、。」

「てめぇに何が分かる!!」

「いいか、俺たちは、お前たちの事を知りたい、もちろん拒否権はない。」

「へぇ、拷問でも何でもしてみろよ!俺たちは何もしゃべらない、無駄な時間をてめぇらが過ごすだけ─。」


 再び大男がリンの眼を見た時、

 大男の全身から滝のような汗が流れた。



 大男は、今リンと1対1の空間で話している感覚に陥る。


(な、なんだ、こいつの眼は。馬鹿にしてるわけでも、見下してるわけでもない、理解できない感情が俺の中に生まれて、恐怖として体を蝕んでくる。目を外せばいいだけなのに、それも出来ない。)

「どうした、何か変わったことでもあったか?」

「うぐっ、う。」


 大男は感じていた。

 リンという1人の戦士が放つ強大なプレッシャーを、それに対抗するには自分の力があまりにも小さすぎると。


 その場から逃げようにも、体が強張り呼吸することすら疲労に感じるほどに体が重い。


「さぁ、教えろ。お前たちは何者だ、何故シオンを、俺達を狙う。」

「……俺たちは、ただの傭兵だ。雇われて、報酬を払ってくれるなら何でもする。」

「なら、あなた達はどこに雇われているの?過去に、この人の命を狙ったこともあるわよね。」

「あ、ああ。それが、雇い主の依頼だったからな。失敗した奴らは、もういないが。」

「失敗の責任を取らされて、命を取られたとでも?」

「その通りだ、あの旅団は狂っている。任務に失敗は許されないんだよ。」


 大男はリンの威圧に震えさせられ、徐々に情報を話していく。


 大男がリーダーとして旅団に雇われ、アンジェもその一員であった。

 最初はモンスター討伐の依頼が多かった。


 しかし、最近では、人の住んでいる場所を襲撃するなど、内容が多岐にわたっていた。



 その中でも、アンジェは人の命を奪う仕事には反対し、皆を止めていた。



 そんな時、今回大男がアンジェを尾行していた理由は、


「あの女は、旅団に目を付けられすぎた。日頃の行いが、人を傷つけることに慣れていないから。」

「それで、お前は旅団からの指示で俺と一緒にアンジェも殺そうとしたのか。」

「……そうだ。ただ、達成できなかった俺たちは時機に死ぬ。あの旅団の手によって。」

「その旅団って、どういうところなの?王都の自警団や騎士団とは全く違うように聞こえるのだけど。」


 セラの声に、大男は反応し顔を見つめる。


「あいつらは、人の命も、動物の命も、植物も何もかもを、目的を達成する為なら手段を問わない最恐の旅団、だ。」

「身喰らう旅団……。セラ、この名前って。」

「詳しくは知らないけど、奴隷売買が行われているラミアに潜伏の噂がある集団ね。」


 黒服たちから、大きな情報を手に入れられそうであった。

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