第89話 関係性

 リンはレムに肩を借り、医務室から仮に作られたギルドに向かう。


 シオンは徐々に新しい建物も増えてきており、村としての機能は高くなっている。


 また、傷こそ多いものの、リンは重傷という怪我はしていないため歩くことに問題はなかった。


 念のためレムに肩を借り、ギルドに入ると、

 セラ、オウロ、カグヤが出迎えた。


「リン君!良かった、目覚めたんだね。」

「お目覚めとは聞いたけど、あんたはいろんな人に心配かけすぎだよ、リン。」

「心配かけて悪かった、オウロ、カグヤ。それと、俺を止めてくれてありがとう、オウロ、セラ。」

「礼はいいわよ、私は助けたくて助けただけだから。」

「僕も同じだよ、セレジア様が来てもらえなかったらリン君を止められなかったと思う、君のこれまでの繋がりが今の君を形作ったんだ。そんな自分を誇って欲しい。」


 リンは皆に優しい顔で迎えられた。



 そして、リンが1番気になっていること。


「アンジェは?」

「奥の医務室にいるよ、行くかい?」

「ああ、連れて行ってくれ。」


 リン、オウロ、レムはアンジェの眠る医務室に入る。


 そこには、上半身を包帯で覆われたアンジェの姿が。

 近くのテーブルには、2本の短剣と1枚の金属のようなものが。

 彼女の姿を見て、リンは心にナイフを突き刺さされた感覚に陥った。


 それもそのはず、自分を守ってアンジェは生死を彷徨ったのだから。


「アンジェ。」


 リンはそっとアンジェの頬に触れる。

 彼女の頬は温かく、しっかり呼吸もしているのが見て取れる。



 確かに、リンの目の前で大男により切られたアンジェ。

 最後に頬に触れられた彼女の手が地面に落ちた時、リンは感じた、アンジェが死ぬと。



 だが、現実には生きていた。

 その嬉しさが、リンをホッとさせていた。


「ありがとう、みんな。アンジェを、俺の妹を救ってくれて。それと、ごめん、アンジェ。こんなに頼りない兄で。」

「いや、君は頼りない兄なんかじゃないよ。ほら、これを見てくれ。」

「え?」


 リンはオウロがもつ1枚の金属の板を見つめる。


「これは、何だ?薄い鉄の、板?」

「そう、この切り傷に心当たりはないかい?」

「……まさか、アンジェが切られた時の。」

「うん、アンジェさんは上半身に鉄の板を装備してたんだ。服の中に、仕込ませてたって言うべきかな?」

「防具としてこれを使ってたのか?でも、アンジェの戦い方からして重い装備は合わないはず……ん?」


 リンは鉄の板の右下に、小さく掘られた文字を見つける。


「L.U?」

「これが何を指すのか、リンさんならお分かりになるんじゃないですか?」

「まさか、俺のことか?リン・ウラノス─。」


 リンが言葉を発した瞬間、頭に電気を流されたかのような鋭い痛みが走る。


 右手で顔を押さえ、まばたきをすると一瞬だけ見えたものが。


 笑顔で語りかけ、その口の動きは、と言っているように見えた。


「……ムクナ、師範?」

「リン君!大丈夫かい!」

「っ!?」


 リンの目の前に映ったムクナの姿はすぐに消え、次前を見ると心配そうに見つめるオウロとレムの姿が。


「……多分、俺が師範からアドバイスをもらって、アンジェに渡したんだと思う。これが無かったら、アンジェは。」

「最悪の事態になってたと思います。リンさんは、命を助ける最高の対策を打ってたんですよ!」

「……俺が。そうだと、いいな。師範、アンジェをこれ以上傷つけないために、俺は戦う。そして、2人で戻るから、ちゃんと見ていてくれ。」



 医務室を後にしたリンは、オウロに質問される。


「リン、聞きたいことがあるんだけどいいかい?」

「ん?」

「セレジア様とは、どういう関係なんだい?」


 オウロの疑問も当たり前だ。


 リンは騎士団と揉め事を起こしたことまでは知っていたが、例えセラが通りすがっただけだとしても命懸けで助ける意味が理解できない。

 加えて、レイではなくリンという本当の名前を知っていたことが気になっていた。


「俺は数週間前にアテネに向かう時、偶々セラと会ったんだ。」

「セラ?セレジア様のことかい?」

「ええ、そうよ。リンにはその名前で呼ばせることを許可したの。私が苦戦していた時に、リンが来てくれて助けられたの。それから、恩を借りっぱなしは私として嫌だったから返すタイミングを探してたの。」

「そうなんですか、リン君はいろんな人と出会う運命なのかもね。」

「まあ、面白い人たちに囲まれてるのは否定しないな。」


 スッと、セラの視線が厳しくなったがスルースキルを発揮しリンは話題を変える。


「捕まえたあいつらもいるんだよな?」

「ちゃんと、ギルドの奥の部屋に閉じ込めているよ。何度かあたし達が話をしないったけどだんまりさ。リンも行くかい?」

「ああ、頼む。……何となくだけど、俺とセラで行っていいか?」

「構わないよ、セレジア様、お願いしていいですか?」

「ええ、力になれるよう頑張るわ。行きましょう、リン。」


 リンとセラは、捕らえた男達の元に向かった。

 はたして、これまでに襲ってきた黒服達との関係、そしてリンを狙う意味とは?

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