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概要
殺人のアリバイは、二万クレジットで売り払った。
頭の中に、ぽっかりと穴が空いている。昨日の午後三時から五時までの二時間。僕はその記憶を、二万クレジットで売った。
窓の外では、相変わらず酸性雨がアスファルトを叩いている。高層ビルの隙間から漏れるけばけばしいネオンが、雨粒に乱反射して部屋の壁に歪んだ虹色の模様を描き出していた。僕、相馬レンの職業はメモリー・ブローカー。他人の記憶の価値を査定し、市場での取引を仲介する。そして時々、自分の記憶を切り売りして糊口をしのぐ。昨日の二時間も、その「時々」だった。
クライアントとの退屈な打ち合わせ。手元のデータパッドに表示される価格変動グラフと、相手の口から吐き出されるありきたりの世間話。そんな無価値な時間の断片は、記憶市場では「ブランク・メモリー」として一定の需要がある。他人の記憶を上書きするための
窓の外では、相変わらず酸性雨がアスファルトを叩いている。高層ビルの隙間から漏れるけばけばしいネオンが、雨粒に乱反射して部屋の壁に歪んだ虹色の模様を描き出していた。僕、相馬レンの職業はメモリー・ブローカー。他人の記憶の価値を査定し、市場での取引を仲介する。そして時々、自分の記憶を切り売りして糊口をしのぐ。昨日の二時間も、その「時々」だった。
クライアントとの退屈な打ち合わせ。手元のデータパッドに表示される価格変動グラフと、相手の口から吐き出されるありきたりの世間話。そんな無価値な時間の断片は、記憶市場では「ブランク・メモリー」として一定の需要がある。他人の記憶を上書きするための
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